一人親方がLINEで受ける仕事|トークは契約書面にならないが、明示には使えます

結論からお伝えすると、LINEのトークは建設業法19条の契約書面の代わりにはなりません。相手の承諾と、改変されていないことを確認できる仕組みが必要だからです。一方で、フリーランス法が元請けに義務づけている「明示」は、LINEでも成立します。そして、LINEで受け取った見積書や請求書のデータは、印刷してもデータのまま残す義務があります。この3つを分けて覚えると、あとで揉めません。

LINEの扱いを契約・明示・保存の3つに分けた図。契約書面にはならない、明示には使える、届いたPDFはデータで残す

LINEのトークが、契約書面にならない理由

建設業法19条1項は、請負契約の当事者は工事内容・請負代金の額・工期など16の事項を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければならないと定めています。許可の有無に関係なく、双方に効きます。

3項に、電子でもよいという道があります。ただし条件が2段あります。

1段目は建設業法施行令5条の5です。電子で済ませようとするときは「あらかじめ、当該契約の相手方に対し、その講じる電磁的措置の種類及び内容を示し」、書面または電磁的方法による承諾を得なければならないと書かれています。使う前に、何で送るかを示して、相手にうんと言ってもらう必要があるということです。

2段目は建設業法施行規則13条の4第2項の技術的基準です。3つあります。

  1. 相手方がファイルへの記録を出力して書面を作成できること
  2. 記録された契約事項等について、改変が行われていないかどうかを確認することができる措置を講じていること
  3. 相手方が本人であることを確認することができる措置を講じていること

LINEのトークは1はできますが、2と3の措置がありません。送信取消でメッセージは消えますし、アカウントが本人のものであることを確認する仕組みも入っていません。だからトーク画面は、19条の書面の代わりにはならないのです。

では意味がないのかというと、そうではありません。契約は口頭でも成立しています(契約書を交わさずに受けた工事はどうなるか|一人親方が民法632条で押さえる3点)。トークは契約書ではなく、何を頼まれたかの記録として効きます。

フリーランス法の「明示」は、LINEでできます

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)3条1項は、業務委託をした場合、直ちに、給付の内容・報酬の額・支払期日その他の事項を、書面または電磁的方法により明示しなければならないと定めています。義務を負うのは、仕事を出した側です。

ここでいう電磁的方法は、公正取引委員会規則2条1項1号で「電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信により送信する方法」とされています。1対1のトークで送る形は、ここに入ります。

明示する項目は同規則1条に並んでいます。当事者が分かる名称、業務委託をした日、給付の内容、受領する期日、受領する場所、検査を完了する期日、報酬の額と支払期日などです。「◯◯号室のクロス、今週中に」だけでは足りません。

そして3条2項に、こちらから動ける条文があります。電磁的方法で明示された場合、書面の交付を求めれば、遅滞なく交付しなければならないとされています(例外は同規則3条2項)。LINEで来た仕事の中身が曖昧なら、「書面でいただけますか」と言える根拠があるということです。

LINEで届いた見積書と請求書は、印刷しても消してはいけない

電子帳簿保存法7条は、電子取引を行った場合には、その取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならないと定めています。メールでもLINEでも、PDFや画像で見積書・請求書・注文書を受け取ったら、それは電子取引です。印刷して綴じるだけでは要件を満たしません。

保存のしかたは同法施行規則4条1項で、次の4つのどれかを行うこととされています。

  1. タイムスタンプが付された後に授受する
  2. 受け取った後、速やかにタイムスタンプを付す
  3. 訂正・削除の履歴が残るか、訂正・削除ができないシステムを使う
  4. 正当な理由がない訂正および削除の防止に関する事務処理の規程を定め、その規程に沿って運用し、備え付ける

一人親方が現実に選べるのは4です。国税庁が「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(個人事業者の例)」をWordファイルで公開しています(出典:国税庁「参考資料(各種規程等のサンプル)」)。名前と日付を入れて印刷して保管すれば、それで足ります。

ファイル名を付け直す作業は、たぶん要りません

「日付・金額・取引先で検索できるようにファイル名を付けろ」と言われて、手が止まっている人がいます。ここは条文を読むと変わります。

施行規則4条1項は、検索の要件について「基準期間における売上高が五千万円以下である事業者」で、税務職員から電磁的記録の提示・提出を求められたときに応じられるようにしている場合は、検索要件を除くとしています。基準期間は個人事業者ならその年の前々年です(同条2項3号)。

さらに同条3項には猶予措置があります。相当の理由があると所轄税務署長が認め、データと、整然とした形式で出力した書面の提示・提出に応じられるようにしているときは、1項の措置によらずに保存できます。

やることは、フォルダに入れて消さないこと、聞かれたら出せることの2つです。領収書とインボイスの保存の線引きは一人親方の領収書とインボイスの保存|1万円未満は帳簿だけ、カード明細だけでは通らないにまとめてあります。

LINEで仕事を受けた日にやることを4段階で並べた図。ダウンロード、フォルダ分け、追加工事の返信、返信までを1件として残す

スクリーンショットで残せば足りるのか?

足りません。保存すべきは受け取ったデータそのものです。PDFで届いたならPDFを、画像で届いたならその画像を保存します。スクリーンショットは、画質が落ちるうえに、元のファイルとの同一性を説明できません。

もうひとつ、トークは端末の中にしかありません。機種変更、再インストール、アカウント削除で消えます。受け取ったその日にファイルをダウンロードして、年ごと・取引先ごとのフォルダへ入れる。ここまでを1つの動作にしておくのが安全です。

追加工事をLINEで言われたときに、返す1通

現場で口頭、あとからトークで「さっきの分もお願い」。ここがいちばん揉めます。返す文面は、次の3つが入っていれば十分です。

  • 日付と場所:「9月◯日、◯◯号室の洋室」
  • 何を増やすか:「クロスの張替えを1面から3面へ」
  • 金額と工期がどうなるか:「+◯円、引渡しは1日後ろへ。これで進めてよろしければ返信をお願いします」

相手の「はい」がトークに残れば、変更を承諾した記録になります。発注する側がこの場面をどう見ているかは、工事中に「ここも一緒に」と言われたら|築古アパートのオーナーが追加工事を口約束にしない3つの手順を読むと分かります。頼む側も、言った言わないを避けたいと思っています。

税務の個別の判断は所轄の税務署、契約の書式は都道府県の建設業許可担当窓口へご確認ください。ここに書いたのは、条文と国税庁の公表資料に書かれている内容です。

\ 最新情報をチェック /