職人を辞めた人はどこへ行くのか|統計で見た転職先と、現場を出ても消えない2つ

結論からお伝えすると、職人を辞めた人の行き先は「別の業界」だけではありません。統計の上では、建設業は人が出ていく業界であると同時に、いちばん人が入ってくる先の一つです。そして現場を離れても、道具のように売り払われずに残るものが2つあります。技能士という名称と、実務をやった年数です。

ここでは、辞めた人がどこへ行くのかを、数字と条文で見ていきます。

職人を辞めた人の行き先を、同じ職種で別の会社・建設の中で現場から外れる・建設の外の3つに分けた図

まず、出た人と入った人の数を並べる

厚生労働省の「令和6年 雇用動向調査結果の概況」の付属統計表に、産業別の入職者数と離職者数が載っています。建設業の1年間はこうなっています。

  • 1月1日現在の常用労働者……250万9,800人
  • 1年間に入った人……29万4,000人(うち他の職場から移ってきた転職入職者が21万800人
  • 1年間に出た人……25万300人

差し引きで4万3,700人の入職超過です。率でみると入職率11.7%・離職率10.0%で、入職が離職を1.7ポイント上回りました。産業計は入職率14.8%・離職率14.2%なので、建設業の離職率は全産業の平均より4.2ポイント低いことになります。

もう一つ見ておきたいのは、入ってきた29万4,000人のうち21万800人、およそ7割が転職で入ってきた人だということです。新卒でまっすぐ入る人だけで成り立っている業界ではありません。一度離れた人が戻ってくる余地も、ここに含まれています。

(出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」付属統計表2-1・2-2)

現場の外にある「建設の仕事」は、増えていない

現場を離れる人の行き先として名前が挙がりやすいのが、測量、建設コンサルタント、地質調査といった建設関連業です。ここについて、国土交通省が2026年8月28日に令和7年度末の登録業者数を公表しました。

  • 測量業……10,924業者(新規登録271、登録消除487)。前年度比216業者・1.9%の減少で、平成15年の14,750業者をピークに22年連続の減少
  • 建設コンサルタント……3,917業者(新規登録102、登録消除115)。前年度比13業者・0.3%減で、平成17年の4,214業者をピークにおおむね横ばい
  • 地質調査業……1,229業者(新規登録36、登録消除28)。前年度比8業者・0.7%増で、平成17年の1,390業者をピークにおおむね横ばい

これは会社の数であって、求人の数でも、そこで働く人の数でもありません。ただ、受け皿そのものが年々広がっているわけではないことは読み取れます。「現場がきついから測量やコンサルへ」という話を聞いたときに、その先が増え続けている前提では考えないほうが確かです。

(出典:国土交通省「測量業は22年連続減少、建設コンサルタント、地質調査業は横ばい~令和7年度末の建設関連業登録業者の登録状況をとりまとめ~」2026年8月28日公表)

現場を離れても残るものとして、技能士の名称と実務をやった年数を左右で比べた図

現場を出ても消えないもの① 技能士の名称

技能検定に合格すると、職業能力開発促進法50条1項により「技能士」と称することができます。表示するときは合格した職種と等級を付けることになっており(同条2項)、技能士でない者はこの名称を使ってはならないと4項に書かれています。

ここで大事なのは、この名称が会社ではなく人に付いていることです。会社を辞めても、職種を変えても、合格した事実は消えません。辞めるかどうか迷っている時期に受検の申込み期間が来ているなら、取り切ってから動くという順番は選ぶ価値があります。

(出典:e-Gov法令検索「職業能力開発促進法」50条・2026年8月29日時点の現行条文)

現場を出ても消えないもの② 実務をやった年数

建設業の許可を取る会社は、営業所ごとに営業所技術者を専任で置かなければなりません。その要件の一つが、建設業法7条2号ロの「許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し10年以上の実務の経験を有する者」です。指定学科を出ていれば高校卒で5年、大学・高専卒で3年に短くなります(同号イ)。

もう一つ、建設業法施行規則7条1号イ(1)は、常勤役員等のうち1人が建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を持つことを求めています。

つまり現場でやってきた年数は、会社が許可を維持するために必要とされている数字だということです。同じ会社の中で内勤に移る、あるいは許可を取りたい会社へ移るという道が現実にあるのは、この条文があるからです。年数の数え方そのものは見習い職人の期間はどれくらい続くのかで扱っています。

(出典:e-Gov法令検索「建設業法」7条、「建設業法施行規則」7条・2026年8月29日時点の現行条文)

結局、行き先はどう分かれるのか?

ここまでを整理すると、大きく3つです。

  1. 同じ職種で、別の会社へ……入職者の約7割が転職入職者という数字は、この道がいちばん太いことを示しています。人間関係や単価が理由なら、職種ごと変える前にここを試す順番があります
  2. 建設の中で、現場から外れる……営業所技術者や経営業務の管理責任者のように、年数そのものが要件になっている役割があります。測量・建設コンサルタント・地質調査は業者数が広がっていないので、求人の出方は会社ごとに確かめる
  3. 建設の外へ……この場合でも、技能士の名称と、施工写真や現場の記録は持ち出せます

やめるか続けるかを決める前の材料の集め方は職人をやめるか続けるか、判断の材料に、年齢が上がってからの入り直しについては30代・40代から職人に転職できるかにまとめています。

まとめ

  • 令和6年の建設業は入職29万4,000人・離職25万300人で、4万3,700人の入職超過。離職率10.0%は産業計より4.2ポイント低い
  • 入ってくる人のおよそ7割が転職入職者。戻る道もここに含まれる
  • 2026年8月28日公表の登録業者数は測量業10,924で22年連続減、建設コンサルタント3,917、地質調査業1,229。現場の外の受け皿は広がっていない
  • 消えないのは技能士の名称(職業能力開発促進法50条)と実務の年数(建設業法7条2号ロの10年、施行規則7条1号イの5年)
  • 道具はすぐに売らない。売り直すと、戻る選択肢だけが先に消える

許可の要件に自分の経験が当てはまるかどうかは、実務経験の内容と証明のしかたで判断が変わります。一般的にはここに書いたとおりですが、実際の扱いは都道府県の建設業許可の窓口にご確認ください。技能検定の受検資格は、指定試験機関や都道府県の職業能力開発協会が窓口です。

辞めたあとにどこへ行ったかという話は、職人になりたい人の掲示板にも出ています。逆側から見た話も、判断の材料になります。

※本記事は2026年8月29日時点の情報です。出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」付属統計表、国土交通省2026年8月28日報道発表「建設関連業 登録業者数調査(令和7年度)」、e-Gov法令検索(職業能力開発促進法・建設業法・建設業法施行規則、いずれも2026年8月29日時点の現行条文)。

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