一人親方が「材料が入らない」を確かめる方法|国の8月調査では13品目すべて需給が均衡

「材料がまだ入らないので、来週にずらしてください」。この一言で1日空くと、一人親方はその日の売上がまるごと消えます。ずらされた側は事情を確かめようがなく、だいたいは「今どこも品薄らしいですね」で終わります。

結論からお伝えすると、品薄かどうかは体感で言い合う話ではなく、国が毎月、都道府県別に調べて公表しています。2026年8月25日に出た最新の結果では、調査対象の7資材13品目すべてで需給動向が「均衡」、在庫状況も調査対象の全資材で「普通」でした。ただし——この調査にクロスも床材も建具も塗料も入っていません。そこまで含めて読むのが、この記事の中身です。

国土交通省の八月調査の読み方を示した図解。需給は全十三品目が均衡、価格はH形鋼だけやや上昇、数値は金額ではなく向きの回答平均、埼玉は十三品目中十品目で低下、内装材は調査対象外であることを挙げている

2026年8月25日に出た調査は、何を数えているのか

国土交通省「主要建設資材需給・価格動向調査(令和8年8月1〜5日現在)」(2026年8月25日公表)です。毎月、全国の都道府県ごとにモニターへ聞き取り、価格動向・需給動向・在庫状況の3つを資材別・地域別にまとめています。

全国の結果はこうでした。

  • 価格動向:H形鋼が「やや上昇」。それ以外の12品目は「横ばい」
  • 需給動向調査対象の全資材で「均衡」
  • 在庫状況:調査対象の全資材で「普通」(在庫は骨材・異形棒鋼・H形鋼・木材のみが対象)

この数字は「価格そのもの」ではありません

ここを取り違えると、まるごと読み間違えます。公表されている数値は、各モニターの回答を1(下落)・2(やや下落)・3(横ばい)・4(やや上昇)・5(上昇)で点数化して平均したものです。つまり前の月と比べてどちらへ動いたかという「向き」の回答であって、いくらになったかという金額ではありません。

数値が3.6から3.4に下がったとしても、それは「値下がりした」ではなく「上がっていると答えた人が減った」という意味です。ここを混ぜると、値下げ交渉の場で足をすくわれます。

埼玉県の13品目を、前の月と並べる

報道発表の別紙には都道府県別の表が付いています。埼玉県の価格動向(7月1〜5日調査 → 8月1〜5日調査)は次のとおりでした。

  • 下がったのは10品目:セメント3.2→3.1、生コン3.3→3.2、砕石3.1→3.0、再生砕石3.1→3.0、アスファルト合材(新材)4.1→3.4アスファルト合材(再生材)4.2→3.6、異形棒鋼3.6→3.4、製材3.6→3.5、型枠用合板3.7→3.4、軽油3.5→3.2
  • 上がったのは2品目:砂3.1→3.2、砂利2.9→3.1
  • 変わらなかったのは1品目:H形鋼3.6→3.6

目立つのはアスファルト合材です。7月は4.1・4.2と「やや上昇」の側にはっきり振れていたのが、8月は3.4・3.6まで戻りました。上がり続けているという感覚は、少なくとも埼玉のこの1か月には当てはまりません。

需給のほうは、埼玉の13品目すべてが2.8〜3.1の範囲、つまり「均衡」のまわりに収まっています。前の月に2.3(やや緩和寄り)だった型枠用合板が2.8まで戻ったのが、いちばん大きな動きでした。

「全国は横ばい」を、自分の県の話だと思わない

全国の1語だけを見ると読み違えます。同じ報道発表の表には、どの判断を何県が答えたかが載っています。

  • 異形棒鋼:全国判定は「横ばい」。しかし内訳は横ばい28県に対し、「やや上昇」と答えた県が19
  • 型枠用合板:全国判定は「横ばい」。内訳は横ばい23県、「やや上昇」19県
  • H形鋼:全国判定は「やや上昇」。ただし16県は「横ばい」と答えている

さらに、この表には3か月先の予想も併記されています。異形棒鋼は「やや上昇」と予想した県が19から30へ増え、H形鋼も現在の26から33へ増えています。今は横ばいでも、鋼材については上がる側を見ている県のほうが多いという読み方になります。

では「材料が入らない」は嘘なのか?

そうは言えません。理由は2つあります。

1つめ。この調査の対象は7資材13品目だけです。セメント、生コンクリート、骨材(砂・砂利・砕石・再生砕石)、アスファルト合材(新材・再生材)、異形棒鋼、H形鋼、木材(製材・型枠用合板)、石油(軽油)。クロス、床材、建具、サッシ、住宅設備機器、塗料、ボードは1品目も入っていません。内装や設備で毎日使う材料は、この調査では数えられていないということです。

2つめ。需給が「均衡」でも、特定の品番・色番・メーカーの在庫は別の話です。全体は足りていても、指定された1品番だけが待ちになることは普通にあります。

だから使い方はこうなります。「業界全体が品薄だから」と言われたときに、その一般論が今の月次データと合っているかを確かめる。合っていないなら、話は業界全体ではなくその1品番の発注のタイミングに移ります。責める必要はありません。「品番で押さえてもらえますか」「入荷予定日はいつですか」に質問が変わるだけで、次の予定が組めます。

全国の判定と県ごとの内訳を並べた図解。全国では横ばいとされた異形棒鋼と型枠用合板も、県別ではやや上昇と答えた県が十九あることを示している

工期がずれたときに残しておくもの

材料待ちで工期が動いたら、口頭で終わらせないことです。建設業法(e-Gov法令検索・2026年8月27日時点)第19条第1項は、契約の締結に際して書面に記載すべき事項として次を挙げています。

  • 第6号:当事者の一方から工事着手の延期や中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  • 第8号:価格等の変動又は変更に基づく工事内容の変更又は請負代金の額の変更及びその額の算定方法に関する定め

つまり「材料が高くなったとき」「工期が動いたとき」にどうするかは、契約書面に書く事項として法律に並んでいます。次の契約で第8号の定めが空欄なら、そこを埋めてもらうのが正攻法です。

都合の悪いことも書いておきます

  • この調査は月に1回、1〜5日時点の聞き取りです。月の後半に起きたことは反映されていません
  • 回答者が2者以下の都道府県は集計から除外されています。県によっては元になった声が少ない可能性があります
  • 「均衡」は在庫が潤沢という意味ではありません。不足でも余剰でもない、というだけです

まとめ

  1. 2026年8月の調査では、13品目すべてで需給が「均衡」、価格が「やや上昇」なのはH形鋼だけ
  2. 埼玉県は13品目中10品目で数値が前月より下がった(=上がったと答えた人が減った)
  3. 数値は金額ではなく向きの回答平均。ここを混ぜて話さない
  4. 内装材はこの調査に入っていない。クロスや床材の品薄は、この数字では説明できません

材料費が上がったときに単価へどう乗せるかは一人親方が材料費の値上がり分を単価に乗せる伝え方に、交渉で使う一次資料の集め方は一人親方が単価交渉に使う材料の集め方にまとめています。「値上げの記事を読む前に一次資料を見る」という同じやり方は、建物を持つ側でも使われています(大家の火災保険料は2026年も上がるのか)。

実際に手元でどの材料が待ちになっているかは、地域と職種で違います。相談・雑談の掲示板でも情報を持ち寄ってみてください。

出典:国土交通省「主要建設資材需給・価格動向調査(令和8年8月1〜5日現在)の結果」(2026年8月25日公表・別紙の都道府県別表を含む)/建設業法(e-Gov法令検索・2026年8月27日時点)

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