一人親方が見積もりを出す前に決める4つ|手間請けか材工か・めくり・下地処理・ゴミ処理
結論からお伝えすると、見積もりで金額を書く前に決めておくのは①手間請けか材工か ②めくり(既存の撤去)は含むか ③下地処理・シーラーは含むか ④ゴミ処理は誰が持つかの4つです。この4つが決まっていない見積もりは、同じ金額でもまったく別の仕事になります。
電話で「1平米いくらでやれる?」と聞かれて、その場で答えたとします。こちらは材料支給の手間だけで計算しているのに、相手の頭では材料もめくりも込みになっている。着工してから食い違いに気づくと、もう金額の話には戻れません。揉めるのは単価が安いからではなく、範囲を決めずに単価だけ先に決めたからです。

① 手間請けか、材工か
材料を自分で用意する材工は、単価が上がる代わりに次の負担が乗ります。
- 材料代の立替:仕入れの支払いが先、入金が後になる。支払いサイトによっては数十万円を先に出す月が出ます
- ロスと余り:拾い間違えたときの追加仕入れと、余った材料の置き場
- 品番の責任:色番違い・ロット違いが出たときに、貼り直しの費用を持つのは誰かという話になります
金額だけ見ると材工のほうが大きく見えますが、手取りは別です。判断の材料は手間請けとは|請負とどう違い、何が有利で何が不利かと手間請けのデメリット|受ける前に確認する5点にまとめています。
② めくりは含むか
賃貸の原状回復はめくり → 下地処理 → シーラー → 張るの4工程です。新築は下地に張るだけで、剥がす作業がありません。この差は時間にも処分費にもそのまま出ます。
「1平米いくら」で答えるとき、その単価が張るだけの金額なのか、剥がして張る金額なのかを先に決めてください。めくりを含めるなら、廃材が出る前提なので④とセットになります。
③ 下地処理はどこまでか
下地処理はいちばん幅が出るところです。決めるのは回数と対象です。
- パテは何回か(1回で済ます現場と、2回かける現場では時間が倍近く変わります)
- ビス頭・ボードの継ぎ目まで見るか
- 穴・欠損・段差の補修は含むか(ここは別途にする人が多い部分です)
- シーラーを打つか(前の職人がどう仕上げたかで必要量が変わります)
「下地処理込み」の一言で受けると、開けてみて手が付けられない部屋でも同じ金額になります。回数で書けば、想定を超えたときに追加の話ができます。
④ ゴミは誰が持つか
剥がしたクロス、パテの空袋、養生の残り。現場に置いて帰れるのか、自分の車で持ち帰るのかで金額が変わります。持ち帰って自分で処分すると、1現場あたり数千円が単価から消えていきます。
持ち帰る場合は、産業廃棄物としての扱いも関わります。処理の資格や委託の要否は現場と自治体で変わるため、一般的には元請けの取り決めと、都道府県の担当窓口で確認するのが確実です。
見積書にはどう書けばいいのか?
難しい文章は要りません。金額の下に1〜2行、範囲を書き足すだけで揉め事の大半は消えます。
- 「本見積は手間請けです。材料は貴社支給を前提としています」
- 「既存クロスのめくり・廃材処分は含みません」(含む場合は「めくり・処分を含む」と書きます)
- 「下地処理はパテ2回まで。穴・欠損の補修は別途お見積りとします」
口頭で決めた範囲は、担当者が代わった時点でなくなります。追加が出たときの伝え方は追加工事が出たときの伝え方と請求を参考にしてください。

数字を比べる前に、範囲を揃える
国土交通省が公表している「労務費に関する基準」では、埼玉県の壁紙張りの基準値が1平米870円とされています。ただしこれは張る手間の賃金の原資だけで、材料費・めくり・廃材処分・素地ごしらえ・法定福利費・諸経費・利益は入っていません。想定は官庁施設の新築で、剥がす作業がない前提です(出典:国土交通省「労務費に関する基準」/2026年8月11日時点)。
一方、賃貸の原状回復で量産クロスを手間請けで受けるときは、1平米500円が下限という水準感があります。この2つは含んでいるものが違うので、そのまま足し引きできません。 ネット上に残る「1平米300〜450円」は10年ほど前の水準です。単価相場の見方は原状回復工事の単価相場|受けるべき水準の判断と人工単価の相場と計算方法|何が含まれているかにあります。
4つを決めてから金額を出す。順番を変えるだけで、値切られる交渉が条件を詰める交渉に変わります。
範囲の決め方は元請けごとの慣習にも左右されます。他の職人がどう線を引いているかは相談・雑談の掲示板にやり取りが残っています。


