一人親方で独立して続かなかった人に共通する5つ|腕ではなく入金で止まる

独立して1年でやめた人と、5年続いている人。腕の差はそれほど大きくないことがあります。分かれ目になるのは、たいてい技術ではありません。

結論からお伝えすると、独立が続かなくなる原因のほとんどは「仕事が取れなかった」ではなく、「入金より先に支払いが来る形を作ってしまった」ことです。手が空いたから終わるのではなく、金が回らなくなって終わる。ここを先に知っておくと、備え方が変わります。

独立が続かなくなる5つの共通点。取引先1社・入金サイト未確認・口頭受注・お金の混同・断らないの5点を示した図

独立して続かなかった人には、どんな共通点があるのか

よく挙がる5つを、起きる順番に並べます。上から順に、独立して早い時期に効いてくるものです。

1. 取引先が1社だけのまま独立している

前の会社の社長から「独立しても仕事は出すから」と言われて出た——という形は珍しくありません。実際に最初の数か月はそれで回ります。

問題は、その1社の現場が止まったときです。元請けの都合で工期が2か月ずれれば、こちらの売上も2か月分そのまま消えます。断る理由がないので、単価を下げられても受けるしかなくなります。1社に頼っている状態は、単価交渉の材料を自分から手放している状態でもあります。

2. 入金のサイトを確認しないまま仕事を受けている

これがいちばん多く、いちばん直撃します。月末締めの翌々月払いだと、4月に働いた分が入るのは6月末です。その間、材料費・ガソリン代・国民健康保険料・国民年金は毎月出ていきます。

働いているのにお金がない、という時期が独立直後に必ず来ます。ここを「自分の稼ぎが少ないせいだ」と受け取ってしまうと、単価の安い仕事を数でこなす方向に走り、体を壊します。入金の時期は、仕事を受ける前に聞いていい項目です。

3. 見積書を出さずに口頭で受けている

「いつもの単価で」「あとで調整するから」で始まった仕事は、追加が出たときに揉めます。もともとの範囲が書面にないので、どこからが追加なのかを説明できません。

結果として、追加分を自腹で飲む形が続きます。1回あたりは数万円でも、年間で積み上がると独立の意味がなくなる金額になります。

4. 事業のお金と家のお金を同じ口座で混ぜている

入金があると口座の残高が増えるので、儲かっているように見えます。しかしそのお金には、あとで払う材料費・税金・保険料が混ざっています。

確定申告の時期になって、手元に納税分が残っていない。これも「売上がなかったから」ではなく、分けていなかったから起きることです。

5. 断らない

独立直後は、来た仕事を全部受けたくなります。断ると次が来ないのではないかと思うからです。

ところが、安い仕事で予定が埋まっていると、条件のいい話が来ても入れられません。予定表が埋まっているのに手元にお金が残らない状態は、実はいちばん抜け出しにくい形です。

腕がある人ほど、なぜ引っかかるのか

この5つを並べると、どれも技術と関係のない話ばかりです。だからこそ、現場では評価されていた人ほど引っかかります。

勤めていたときは、単価も入金も見積書も、会社の誰かがやっていました。自分の担当は現場だけです。独立するというのは、その「誰かがやっていた部分」を全部引き受けることでもあります。ここを技術の延長だと思って独立すると、現場は問題ないのに事務でつまずきます。

逆に言えば、この部分は経験より段取りの問題なので、独立前に形を作っておけばほとんど防げます。腕を上げるのには時間がかかりますが、口座を分けるのも、入金日を聞くのも、その日のうちに終わります。

やめた人が全員失敗したわけではない

もう一点だけ書いておきます。独立をやめて勤めに戻ることは、失敗と同じではありません。

資金が尽きる前に戻れば、道具も取引先も残ります。追い詰められてから決めると、両方とも失います。撤退の判断がいちばん早くできるのは、独立して間もない時期です。「あと何か月分の生活費があるか」を月に一度だけ確認しておくと、その判断が感情ではなく数字でできるようになります。

独立前に潰しておく順番を5段階で示した図。2社目の話・入金サイトの確認・見積書・事業用口座・受けない条件

この5つは、独立前にどこまで潰せるのか

  1. 取引先は、辞める前に2社目の話を始めておく。1社目に義理を通したうえで、声をかけられる先を作っておきます
  2. 入金サイトを聞き、生活費の何か月分が必要かを逆算する。最初の入金までの月数がそのまま必要な手元資金です
  3. 簡単でいいので見積書を出す形にする。金額より、作業範囲が書いてあることに意味があります
  4. 事業用の口座を1つ作る。屋号がなくても個人名義で分けられます
  5. 受けない条件を先に決めておく。その場で判断すると、たいてい受けてしまいます

独立前の準備そのものは独立して一人親方になる前に準備する7つに、最初の3か月をどう乗り切るかは一人親方として独立した最初の3か月をどう乗り切るかにまとめています。必要な資金の目安は独立資金はいくら必要かを、取引先を増やす具体的なルートは一人親方が元請けに頼らず仕事を取る5つのルートを参照してください。

なお、税金・保険・申告の扱いは事情によって変わります。一般的にはここに書いたとおりですが、具体的な判断は税務署や税理士、労働保険については労働基準監督署に確認してください。

すでに独立している人がどこでつまずいたかは、本人に聞くのがいちばん早いです。相談・雑談のフォーラムで聞いてみてください。

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