見習い職人の質問のしかた|親方に嫌われない聞き方と、聞くタイミング

朝8時すぎ。脚立の上で親方が天井のクロスにローラーを当てている。その背中に向かって「これ、どうすればいいですか」と声をかける。返ってくるのは「後で」の一言か、無言。見習いのうちは、この場面が何度も来ます。

結論からお伝えすると、親方が嫌がっているのは「質問したこと」ではありません。手を止めさせたタイミングと、答えを丸ごと預ける聞き方の2つです。逆に言えば、聞く中身を変えなくても、この2点を直すだけで返ってくる言葉が変わります。

親方に嫌われない質問のしかたを6点にまとめた図。手を止めない時間に聞く、案を添えて聞く、メモは数字・順番・名前、休憩でまとめて出す、なぜは物に向ける、単価は現場で聞かない。

なぜ同じ質問で機嫌が変わるのか

職人の作業には、途中で止められない工程があります。糊を付けたクロスは時間が経つほど扱いにくくなり、パテは硬化が始まり、塗料には可使時間があります。脚立の上で片手がふさがっている場面もあります。

ここで割り込まれると、親方は作業を止めるだけでなく、その先の段取りを組み直すことになります。つまり反応しているのは質問の中身ではなく、割り込みのコストです。中身が良くても、タイミングが悪ければ同じ扱いになります。

聞いていいタイミングは1日に4回ある

1日の流れを見ると、手が空いている時間は決まっています。

  • 朝の段取り(作業に入る前)…その日どこまでやるかを親方が頭に描いている時間。いちばん通りやすい
  • 材料の搬入・準備中…手は動いていても頭は空いている。並んで運びながら聞ける
  • 10時・15時の休憩…まとめて聞く時間。ここに向けて溜めておく
  • 片付けのあと…その日に分からなかったことを翌日に持ち越さない

逆に避けたいのは、施工の真っ最中、材料を切っている最中、そして電話中です。「今いいですか」の一言を挟むだけでも、印象はかなり変わります。

「どうすればいいですか」を「こう考えていますが」に変える

もう一つが聞き方です。同じ内容でも、答えを丸ごと預ける形にすると、親方は一から説明することになります。

  • 丸投げ型:「この入隅、どうしますか」
  • 案付き型:「入隅は突き付けでいこうと思いますが、重ねますか」

案付き型にすると、返事が「うん」か「いや、こうして」の2択になります。親方の側で考える手間がほぼゼロになるので、手を止める時間も数秒で済みます。案が間違っていても構いません。むしろ間違いを口に出したほうが、その場で直してもらえます。

案が浮かばないときは、選択肢を2つ出す形でも通ります。「AかBか迷っています」まで持っていければ十分です。

メモには何を書けばいいのか

いちばん嫌われるのは、同じことを二度聞くことです。裏を返せば、二度聞かなければ質問の回数が多くても嫌われにくくなります。

書くのは次の3種類に絞ると続きます。

  1. 数字…寸法、本数、時間、枚数。あとで思い出せないのはほぼ数字です
  2. 順番…どの工程を先にやるか。現場ごとに違います
  3. 名前…材料名、道具名、金物の呼び方。名前が分かると次から質問が短くなります

手のひらに入るサイズのメモ帳が扱いやすく、道具の納まりや仕上がりはスマートフォンで写真を撮っておくと確実です。ただし他人の住まいや現場を撮ることになるので、撮ってよいかは必ず先に確認してください。

聞いてはいけない質問はあるか

禁止というより、場所を選ぶものがあります。

  • 「なぜ」を人に向ける聞き方…「なんでそんなやり方するんですか」は詰問に聞こえます。「この下地だと重ねたほうがいいんですか」と物に向けて聞くと同じ答えが返ってきます
  • 単価や日当の話…現場の作業中には向きません。事務所か終業後に、時間をもらって聞く
  • 労働条件…社会保険や残業の扱いは聞いていい内容です。ただし現場ではなく面談の場で。加入の要否など制度の判断は、一般的には年金事務所や労働基準監督署など公的な窓口で確認するのが確実です
3か月で聞かなくても動けるようになるための4段階の図。朝に作業と目標を確認、分からない点はメモして手は止めない、休憩で案を添えてまとめて聞く、翌日は同じ質問をしない。

3か月で「聞かなくても動ける」に変える

質問の目的は、質問しなくて済む状態を作ることです。同じ1日でも、次の順番で回すと減っていきます。

  1. 朝、その日の作業と終わりの目標を確認する
  2. 作業中に分からない点はメモに書き、手は止めない
  3. 休憩でまとめて聞く(案を添える)
  4. 翌日、同じ質問をしない

この4つを回していれば、3か月もすれば「あれやっといて」で通じる範囲が広がります。1日の流れそのものが分からないうちは、見習い職人の1日の流れも合わせて読んでみてください。持ち物の話は見習いのうちに揃える道具にまとめています。

なお、何を聞いても答えが返ってこない、そもそも教える人がいないという場合は、聞き方の問題ではありません。会社選びのほうを見直す段階です。判断材料は未経験者が職人の修行先を選ぶときにまとめています。

同じ立場の人がどう乗り切ったかは、掲示板でも聞けます。→ 職人になりたい人の掲示板

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