職人に向いている人・続かない人の違い
結論からお伝えすると、職人として続いている人と辞めた人の差は、手先の器用さではありません。実際に分かれているのは同じ作業を同じ品質で繰り返せるか、失敗をその日のうちに言えるか、自分で時間を管理できるかの3点です。どれも入る前の器用さとは関係がなく、後から身につけられる部分でもあります。
国の調査では、建設業に新卒で入った人の3年以内の離職率は3割から4割台で推移しています。辞める人が一定数いるのは事実です。ただ、辞めた理由を並べていくと、腕が上がらなかったからという話は意外に少数派です。
続く人と続かない人の、行動の違い
| 場面 | 続いている人の動き | 辞めていった人の動き |
|---|---|---|
| 失敗したとき | その場で言う。手直しの段取りまで一緒に持っていく | 気づかれないことを期待して黙る |
| 手が空いたとき | 次に必要な材料を出す、掃く、片付ける | 指示を待って立っている |
| 同じ作業が続くとき | 1回ごとに秒数や仕上がりを気にする | 飽きて雑になり、手直しが増える |
| 体がきついとき | 寝る時間と食事を先に変える | 気合いで押し切ろうとして、ある日折れる |
| 給料が思ったより低いとき | いつ何ができれば上がるかを聞く | 誰にも言わずに転職サイトを見る |
| 朝 | 10分前に着いて、道具の確認を終えている | 時間ぎりぎりに着いて、そこから準備を始める |
右の列は、性格の問題ではなく習慣の問題です。だから変えられます。ここを1つずつ左に寄せていくだけで、3か月後の評価はかなり違ってきます。
先に、辞めていった人の理由から
- 「見て覚えろ」を守って3か月質問せず、何も分からないまま自分に見切りをつけた
- 手直しを隠したことが後で分かり、居づらくなってそのまま来なくなった
- 同じ間取りのクロスを50戸続けて貼り、単調さに耐えられなくなった
- 雨で稼働が落ちた月の手取りを見て、将来の計算が立たないと感じた
- 腰を痛めたときに休まず続け、1年後に本格的に働けなくなった
3つ目に注目してください。この人は器用でした。最初の3か月で誰よりも早く貼れるようになった人でした。手先が器用な人ほど早く辞めていくことがあります。器用な人は最初に伸びるぶん、この仕事の大半が「同じことの繰り返し」だという事実に早く行き当たるからです。器用さは入口を楽にしますが、続ける理由にはなりません。
向いていると言える要素は、具体的に何か
現場で長く残っている人に共通しているのは、次のような部分です。
- 反復に耐えられる。同じ作業を100回やって、100回目を1回目より少し良くできる
- 自分の時間を自分で区切れる。誰も見ていない現場で、決めた時間に始められる
- 体を管理できる。寝る時間、水分、痛みが出たときに休む判断
- 金の勘定ができる。日給と稼働日数、道具代、車の経費を頭で回せる
- 人と最低限の連絡が取れる。着いた、終わった、遅れる、が言える
逆に、よく「向いている条件」として挙げられるのに、実際にはそれほど効いていないものもあります。模型作りが好き、日曜大工の経験がある、力が強い。あれば入口が少し楽になりますが、3年後に残っているかとはほとんど関係していません。
「反復に耐えられる」は、我慢の話ではありません。同じ間取りのクロスを50戸貼るときに、40戸目で「ここの入隅の当て方を変えたら3分縮んだ」と気づけるかどうかです。この見つけ方ができる人は、繰り返しが苦にならなくなります。逆に、1戸目と50戸目を同じ気持ちで貼っている人は、40戸目あたりで手が止まります。器用さより、こちらのほうが3年後に効いてきます。
今きついのは、向いていないからなのか?
ここが一番迷うところです。切り分けの目安を挙げます。
| 今の状態 | どう見るか |
|---|---|
| 入って1か月以内で体がきつい | ほぼ全員が通る。3週間を越えると体が変わる |
| 3か月目で成長が見えない | 時期の問題。できる作業を書き出せば増えている |
| 作業そのものに興味が湧かない | 1年続いても変わらないことが多い。職種を替える検討を |
| 痛みが数か月引かない | 体の問題。まず医療機関へ。職種の変更も選択肢 |
| 会社の人と合わない | 向き不向きではない。会社を替えれば解決する場合が多い |
「向いていない」と「今の会社が合わない」を混ぜて考えると、辞める判断を急ぎすぎます。1年目に何が起きるかを整理した未経験から内装職人になるにはもあわせて読んでみてください。時期の話と、適性の話は別です。
まとめ
続くかどうかを決めているのは、反復に耐えられるか、失敗をその日に言えるか、自分で時間と体を管理できるか。この3つです。器用さは入口を楽にするだけで、続ける理由にはなりません。いまきついのが時期のせいか、職種のせいか、会社のせいかを分けて考えるところから始めてみてください。分けられれば、辞める以外の選択肢がいくつか出てきます。


