一人親方が独立する時期は何月がいいか|2026年1月から開業届の期限が変わった

「区切りがいいから4月にしようと思って」。独立の相談で、いちばんよく出てくる言い方です。区切りで決めるのは悪いことではありませんが、実際に金額が動くのは「何月か」ではなく「その月の何日に辞めるか」のほうです。

結論からお伝えすると、月の選び方で効くのは書類の期限、日の選び方で効くのは保険料です。そして2026年1月1日から、開業届の提出期限そのものが変わりました。ネット上に並んでいる「開業から1か月以内」という説明は、いま出すぶんには当てはまりません。

独立で走り出す4つの期限を示した図。開業届は確定申告期限まで、青色申告は開業から2か月、任意継続の申出は20日以内、国保の届出は14日以内

開業届の期限は2026年から変わった

国税庁のタックスアンサーNo.2090「新たに事業を始めたときの届出など」は、令和8年1月1日現在の法令等として、こう書いています。

  • 書類名は「個人事業の開廃業等届出書」(従来の「個人事業の開業・廃業等届出書」から変わりました)
  • 提出期限は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」

所得税法229条の現行条文を確認しても、期限は「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに」と書かれており、「1か月以内」という文言はどこにもありません。3月に開業したなら翌年3月15日まで、11月に開業しても翌年3月15日まで、ということになります。

ただし「遅く出していい」と読まないでください。後述する青色申告のほうは期限が別で、しかも早い。開業届を後回しにすると、青色申告の申請も一緒に忘れます。

青色申告の期限は月で決まる

所得税法144条は、青色申告の承認申請の期限をこう定めています。「その年三月十五日まで(その年一月十六日以後新たに……業務を開始した場合には、その業務を開始した日から二月以内)」。

ここに、見落とされやすい段差があります。

  • 1月1日〜1月15日に開業した人は、開業から2か月ではなく「その年の3月15日まで」です。1月5日開業なら、2か月後の3月5日ではなく3月15日まで
  • 1月16日以後の開業は、開業日から2か月以内。5月10日開業なら7月10日まで
  • 12月20日開業でも、翌年2月20日まで。年末の開業でも初年度から青色にできます

「今年はもう間に合わないから来年にする」と待つ理由は、青色申告に関してはありません。一般的な扱いは以上のとおりですが、事業の開始日をいつと見るかは事情によって変わります。所轄の税務署に確認してください。

効くのは月ではなく退職日

ここからが金額の話です。健康保険法36条2号により、会社の健康保険の資格を失うのは「退職した日の翌日」です。3月31日に辞めれば喪失は4月1日、3月30日に辞めれば喪失は3月31日になります。

そして健康保険法156条3項は「前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しない」と定めています。

組み合わせるとこうなります。

  • 3月31日(月末)に退職 → 喪失は4月1日。3月は月末まで被保険者なので、3月分の健康保険料と厚生年金保険料がかかる
  • 3月30日(月末の前日)に退職 → 喪失は3月31日。3月分は算定されない

ただし「前日に辞めたほうが得」とは限りません。3月30日に辞めれば、3月分は国民健康保険と国民年金に入ることになり、そちらの保険料が発生します。会社が半分持ってくれる厚生年金と、全額自己負担の国民年金では中身も違います。どちらが有利かは報酬月額と自治体の国保料しだいなので、年金事務所と市区町村の窓口で自分の数字を確認してください。

知っておいてほしいのは、1日ずらすだけで扱いが変わる仕組みがあるということです。何も知らずに月末を選ぶのと、知ったうえで月末を選ぶのは違います。

月末に退職する場合と月末の前日に退職する場合を左右で比べた図。資格喪失日が1日ずれることで、その月の健康保険料が算定されるかどうかが変わることを示している

20日と14日、2つの締切

辞めたあとに走り出す期限が2つあります。

  1. 任意継続の申出は20日以内(健康保険法37条1項)。会社の健康保険を最大2年間続ける制度で、申出は資格を喪失した日から20日以内。正当な理由があれば期間経過後の申出も受理されることがある、とただし書がありますが、あてにする期限ではありません
  2. 国民健康保険の届出は14日以内(国民健康保険法施行規則3条)。会社の健康保険の適用でなくなったため国保の資格を取得した場合、世帯主が14日以内に市町村へ届け出ます

20日と14日が同時に走るので、迷っている時間はあまりありません。国保と任意継続のどちらが安いかは、退職前に両方の金額を出してから決めるのが確実です。

独立する月で、仕事の量は変わるのか?

制度と別に、需要の波もあります。国土交通省の建設労働需給調査では、8職種計の過不足率が1〜3月に年内の谷になり、7月と10月に山が来ています。一人親方が仕事の波をならす順番で詳しく扱っているので、受注の見通しはそちらを見てください。

ただ、この波は工種で逆に振れます。原状回復は3月が山です。自分の工種の山がいつかを、直近2年の自分の稼働日数で数えてみるほうが、統計より早い。

順番だけ決めておく

時期の話は、突き詰めると次の順番に落ちます。

  1. 退職日を月末にするか前日にするかを、金額を出してから決める
  2. 退職後14日以内に国保、20日以内に任意継続。どちらか一方を選ぶ
  3. 開業届を出す(期限は翌年の確定申告期限まで。ただし後回しにしない)
  4. 青色申告承認申請を、開業から2か月以内に出す

辞める前にやることは職人が会社を辞める前に済ませる5つ、開業届の書き方そのものは一人親方の開業届|出すタイミングと書き方にあります。1年目に何月いくら出ていくかは一人親方が独立1年目に払うお金のカレンダーにまとめました。

いつ独立したかは人それぞれです。相談・雑談の掲示板で、先に出た人の時期を聞いてみてください。

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