職人が会社を辞める前に済ませる5つ|開業届より先に期限が来るもの

結論からお伝えすると、会社を辞める前に済ませておくべきことは「辞めた後ではできないこと」と「期限が短いもの」の2つだけです。独立の準備で先に手をつけられがちな開業届は、実はいちばん期限が長い手続きになりました。

2026年8月13日時点で、国税庁の手続案内には「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください」と書かれています。所得税法第229条の条文も同じ書き方です。「開業から1か月以内」と説明している記事が今も多く残っていますが、その期限で急ぐ必要はありません。(出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」/e-Gov法令検索「所得税法」)

急ぐのは別の3つです。順に見ていきます。

退職前後の手続きを期限が短い順に並べた図。国民年金14日、健康保険の任意継続20日、青色申告2か月、開業届は確定申告期限までの順を示した図解

期限が短い順に並べると、こうなる

  1. 国民年金の切替:退職日の翌日から14日以内。市区町村の国民年金窓口で第1号被保険者への種別変更をします(出典:日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」)
  2. 健康保険の任意継続:資格を失った日から20日以内。健康保険法第37条にこの日数が書かれています。国民健康保険と比べて安いほうを選びますが、比較には在職中の標準報酬月額が要ります
  3. 青色申告の承認申請:業務を開始した日から2か月以内(その年の1月16日以後に開業した場合)。所得税法第144条。開業届より、こちらのほうが先に期限が来ます

順番を間違えると、開業届はゆっくり出せたのに青色申告だけ間に合わず、初年度が白色になるという形で損が出ます。開業届そのものの書き方は一人親方の開業届|出すタイミングと書き方にまとめています。

在職中にしかできない5つを並べた図。カードとローンの審査、標準報酬月額の控え、会社負担の講習、有給の確認、受け取る書類の約束を示した図解

在職中にしかできない5つ

ここからが本題です。辞めた後でもできることは後回しでよく、在職中の立場があるうちにしかできないものを先に片付けます。

  1. クレジットカード・車のローンの審査。独立直後は事業の実績がなく、審査の材料が乏しくなります。工具や車の資金計画があるなら、在職中に通しておく
  2. 標準報酬月額を控えておく。健康保険の任意継続とどちらが安いかは、この数字がないと計算できません。給与明細か健康保険証の交付元に確認できます
  3. 会社負担で受けられる講習を受けきる。玉掛け・高所作業車・足場の特別教育などは、独立後は全額自腹になります。費用は見習い職人の特別教育の受け方と費用に書きました
  4. 有給の残日数を確認して消化の相談をする。退職日を決めてから言うと調整の幅がなくなります
  5. 受け取る書類を先に約束しておく。離職票、雇用保険被保険者証、源泉徴収票、年金手帳(基礎年金番号通知書)。源泉徴収票は退職後に発行されるので、送付先を伝えておくと手間が減ります

取引先への話は、いつ切り出すのか?

ここがいちばん揉めやすいところです。在職中に、勤め先を通さず取引先へ独立の話を持ちかけるのは避けてください。就業規則に競業避止や秘密保持の定めがある場合があり、円満に辞められなくなると、独立後にいちばん効く「前の会社からの応援の声」を失います。

順番としては、会社に退職の意思を伝える→引き継ぎの範囲を決める→そのうえで挨拶をするが無難です。競業避止の条項がどこまで有効かは個別の事情で判断が分かれるため、心配な条項があれば労働基準監督署や弁護士など専門の窓口で確認してください。

辞めた後でよいもの

逆に、次のものは辞めてからで間に合います。先に手をつけて時間を使わないでください。

税や社会保険の個別の判断は、税務署・年金事務所・市区町村の窓口で確認するのが確実です。ここでは一般的な期限だけを整理しました。

独立そのものの準備は独立して一人親方になる前に準備する7つ、辞めた直後の資金の動きは独立した最初の3か月をどう乗り切るかに分けて書いています。辞める時期で迷っている方は相談・雑談の掲示板に同じ立場のやり取りがあります。

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