一人親方がYouTubeをやる意味はあるか|60代の72.6%が見ている、詰まるのは音です

手元だけを映した5分の動画に、無料と書いてあった曲を1本重ねて上げた。3日後、「著作権の申し立てがありました」という通知が届く。慌てて動画を下げる——ここで下げてしまう人がいます。許諾契約のあるサービスでの申し立ては、著作権の侵害を主張するものではありません。

結論からお伝えすると、職人の動画で手が止まるのは、映っているものではなく音のほうです。見る人の幅は写真より広く、60代でも72.6%が動画共有サービスを使っています。始める価値はありますが、曲の扱いだけは先に整理しておかないと、公開のたびに止まります。

見る人の幅は、写真のSNSより1段広い

総務省情報通信政策研究所の「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(2026年6月26日公表、調査対象期間は令和7年12月1日~7日、13歳から79歳の男女1,800人への訪問留置調査)から、年代別の利用率を引きます。

  • YouTube:全年代81.5%/40代91.6%/50代84.9%/60代72.6%/70代48.5%
  • Instagram:全年代54.8%/40代67.1%/50代54.4%/60代36.1%/70代15.8%

60代で比べると72.6%と36.1%、70代では48.5%と15.8%です。年齢が上がるほど差が開きます。元請けや大家さんの年代が上のほうにあるなら、動画のほうが届く先は広いことになります。

ただしこれは全国の一般の人を対象にした調査で、建設業の発注担当者を抜き出した数字ではありません。「見ている人が多い場所」を示す材料であって、「そこから仕事が来る率」を示すものではない点は分けて考えてください。

職人の動画で止まるのは音。曲には権利が2つ乗る、市販の音源は別の許諾が要る、一人親方は個人の扱い、現場の音が入ったときは著作権法30条の2、申し立ては削除の合図ではない。

JASRACの許諾は「曲を作った人の権利」だけです

ここが本題です。日本音楽著作権協会(JASRAC)は、YouTubeなど一部の動画投稿サービスと利用許諾契約を結んでいます。契約のあるサービスでは、投稿者は一定の範囲内であれば、JASRAC管理楽曲を含む動画を個別の手続きなくアップロードできます。

問題はその先です。JASRACは同協会のページで、市販のCDやダウンロードした音源を使う場合について、次のように案内しています。

  • 著作権とは別に、著作隣接権(音源製作者やアーティストの権利)の許諾を得る必要がある
  • 許諾を得る相手は音源製作者(レコード会社等)で、直接問い合わせる
  • 窓口は日本レコード協会の「音源利用許諾窓口一覧」にまとまっている

つまり1曲には権利が2つ乗っています。作詞・作曲の側はJASRACの包括契約で済むことがあっても、録音された音源そのものの権利は別建てです。「JASRACが管理している曲だから市販のCDを流してよい」は、半分しか合っていません。

なお、YouTubeのシステムが管理楽曲を検知して「著作権の申し立て」の通知が届くことがありますが、JASRACはこれについて「著作権の侵害を主張するものではありませんので、動画を削除する必要はありません」と明記しています。通知が来ただけで下げる必要はありません。

一人親方は「個人」なのか、「個人以外」なのか?

JASRACの案内は、手続きの要否を「個人」と「個人以外」で分けています。区分の決め方はこう書かれています。

動画をアップロードするアカウントを所有・運営する者が、個人(個人事業主を含みます)の場合を「個人」とし、企業や団体等の場合を「個人以外」としている。

読みどころは括弧の中です。個人事業主は「個人」に含まれます。屋号を名乗っていても、法人にしていなければ「個人」の側です。逆に、法人成りしてアカウントを会社名義に移した時点で区分が変わります。手続きが要るかどうかは、同協会が用意しているフローチャートで確認できます。

手続きなしで使えるのは、許諾契約のあるサービスへの投稿、管理楽曲を自分で演奏、一定の範囲内での利用。別の許諾が要るのは、市販CDの音源をそのまま使う、ダウンロードした音源を使う場合で、著作隣接権は別の権利。

現場のラジオが入ってしまったとき

撮っている最中に、他の職が持ち込んだラジオが鳴っていることがあります。これには別の条文があります。著作権法第30条の2(付随対象著作物の利用)です。

条文は、写真の撮影や録音・録画などを行うにあたって、その対象に付随して入ってしまった音や物の著作物について、作成された動画のなかでその著作物が軽微な構成部分となる場合に限り、次の要素に照らして正当な範囲内で利用できると定めています。

  • その著作物の利用により利益を得る目的の有無
  • 付随して入ったものを、撮影対象から分離することの困難性の程度
  • 動画のなかでその著作物が果たす役割

ただし書きも付いています。著作物の種類・用途と利用の態様に照らして著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでないとされています。

実務に落とすと、「現場の音を全部消す」ではなく「曲を主役にしない」が線です。手元の作業音のなかに遠くの音が混ざるのと、曲に合わせて画を切るのとでは、条文が見ている「果たす役割」が変わります。個別の判断は権利者や弁護士に確認してください。

それで、やる意味はどこにあるのか

再生数を集めることを目的にすると、たいてい続きません。一人親方の場合、動画が効くのは次の3つです。

  1. 説明を1本にまとめて送る。下地の状態や納まりの提案は、文章より画のほうが早く伝わります。見積書に1本のリンクを添えるだけで電話が減ります
  2. 人を採る。求人票では伝わらない現場の空気が出ます。求人票の側で何が決まっているかは未経験が職人の求人票で見る5項目|法律で書くことが決まっている欄と、空欄の読み方にあります
  3. 記録として残す。工事の前後を残すのは、揉めたときにいちばん効きます。残し方は原状回復は工事の前後で写真を残す|築古アパートのオーナーが契約書の11号に足す1行が、発注する側から見た書き方でまとまっています

サイトに文字で書くときにつまずきやすい条文は一人親方がホームページを作る前に見る5点|許可がないと「建設業者」とは書けないにあります。動画の説明文も同じ扱いです。

まとめ

動画は、見る人の幅がいちばん広い形式です。60代72.6%・70代48.5%という数字は、写真中心のサービスでは出てきません。そのうえで、始める前に決めるのは音の扱いだけです。市販の音源は使わない。自分で用意した音か、権利関係のはっきりした素材にする。現場の音は、曲を主役にしない。この3つを決めておけば、公開のたびに止まることはなくなります。

(出典:総務省情報通信政策研究所「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)」令和8年6月公表/日本音楽著作権協会「YouTubeなどの動画投稿(共有)サービスでの音楽利用」/e-Gov法令検索「著作権法」。いずれも2026年9月12日確認)

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