一人親方が現場写真をSNSに載せる前に|消してと言われたら、返事の期限は7日です
通知は1行だけで届きます。「この投稿について削除の申出がありました。削除に同意しますか」。写っているのは自分が貼ったクロスの仕上がりで、奥の窓に隣家の壁が少し入っている。心当たりがないので、返事は現場から戻ってからにする——ここが分かれ目です。
結論からお伝えすると、現場写真をSNSに載せたあとに動くのは「7日」という時計です。照会を受けた日から7日を過ぎると、こちらが同意していなくても、運営会社は投稿を消したことについて責任を負わなくなります。根拠は情報流通プラットフォーム対処法(特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律・平成13年法律第137号)で、条文は公開されています。

消してくれと言われたとき、先に動くのは運営会社です
写真を消してほしい人は、あなたに連絡してくるとは限りません。同法第22条第1項は、総務大臣から指定を受けた大規模な事業者に対し、権利を侵害されたとする人が削除の申出を行うための方法を定めて公表することを義務づけています。申出の窓口は運営会社側にあります。
その窓口には条件が付いています(同条第2項各号)。
- インターネット経由で申出ができること
- 申出を行おうとする者に過重な負担を課さないこと
- 申出を受けた日時が、申出をした人に分かるようになっていること
3つ目が効きます。日時が記録される設計なので、そこから期限が数え始められます。申出があったときは、第23条により「権利が不当に侵害されているかどうか」を遅滞なく調査する義務が運営会社に生じます。
返事をしない7日間に、何が決まるのか?
ここが本題です。同法第3条第2項第2号は、次の場合に、運営会社は削除によって発信者に生じた損害を賠償する責任を負わないと定めています。
- 権利を侵害されたとする人から、侵害情報等を示して削除の申出があった
- 運営会社が、発信者(=投稿した本人)に対し、その侵害情報等を示して削除に同意するかどうかを照会した
- 発信者が照会を受けた日から7日を経過しても、同意しない旨の申出をしなかった
誤解されやすいところを先に書きます。7日は「投稿が自動で消える期限」ではありません。また、黙っていることが法律上の同意とみなされるわけでもありません。決まるのは運営会社の責任の有無です。責任を問われない状態になれば、運営会社は迷わず消せます。結果として、こちらから見れば消える期限と変わりません。
逆に、7日以内に「同意しない」と返せば、この免責は働きません。ただしそれは「消されない」という意味ではなく、運営会社が自分の判断で消した場合の責任が残る、という意味です。争いの土俵が変わるだけだと考えてください。
「14日以内」と書いてある期限は、省令で7日に縮まっています
申出をした側にも期限が置かれています。同法第25条第1項は、運営会社に対し、削除するかどうかを判断して「申出を受けた日から14日以内の総務省令で定める期間内」に申出者へ通知することを義務づけています。
この「総務省令で定める期間」は、同法施行規則(令和4年総務省令第39号)第16条で7日と定められています。条文の見出しだけを読むと14日に見えますが、実務で動いているのは7日です。
第25条第2項には延ばせる場合が並んでいます。(1)調査のため発信者の意見を聴くこととしたとき(2)調査を侵害情報調査専門員に行わせることとしたとき(3)その他やむを得ない理由があるとき。この場合は判断後に遅滞なく通知すれば足りますが、「どれに当たるか」は7日以内に通知しなければなりません。つまり7日目には、何かしらの連絡が申出者に届く建て付けになっています。
なお、その調査を担当する侵害情報調査専門員の人数は、施行規則第14条で「大規模特定電気通信役務ごとに1人」と定められています。発信者数の多少にかかわらず1人です。
どのサービスがこの仕組みの対象なのか
第20条第1項の指定を受けた事業者だけが対象です。基準は施行規則第8条で、次のどちらかに当たることとされています。
- 平均月間発信者数が1,000万を超えること(同条第3項)
- 平均月間延べ発信者数が200万を超えること(同条第5項)
これに近づくと報告義務も生じます。施行規則第9条は、平均月間発信者数900万以上または平均月間延べ発信者数180万以上の事業者に、報告年度経過後1か月以内の報告書提出を求めています。
総務省が第20条第1項に基づいて指定した事業者は、同省のページで公表されています(2026年9月12日確認)。
- 令和7年4月30日:Google LLC(YouTube)/LINEヤフー株式会社(Yahoo!知恵袋、Yahoo!ファイナンス、LINEオープンチャット、LINE VOOM)/Meta Platforms, Inc.(Facebook、Instagram、Threads)/TikTok Pte. Ltd.(TikTok、TikTok Lite)/X Corp.(X)
- 令和7年5月29日:株式会社ドワンゴ(ニコニコ)
- 令和7年5月30日:株式会社サイバーエージェント(Amebaブログ)/株式会社湘南西武ホーム(爆サイ.com)/Pinterest Europe Limited(Pinterest)
職人が現場写真を載せる先は、この一覧にほぼ入っています。逆に、自分のホームページや小さな業界掲示板は第5章・第6章の対象外です。その場合は窓口の公表義務も7日の通知義務もなく、第3条の枠——照会を受けてから7日——だけが残ります。
どのような情報が削除対象になるかの目安は、総務省の「違法情報ガイドライン」(令和7年3月11日制定、令和8年8月6日改定)に例示されています。基準そのものは各社が作って公表します。
消されたとき、理由は通知されます
第27条は、指定を受けた事業者が送信防止措置を講じたときは、遅滞なく、その旨と理由を発信者に通知するか、発信者が容易に知り得る状態に置くことを義務づけています。さらに、第26条第1項の基準に従って消した場合は、その措置と基準との関係を明らかにしなければならないとされています。
「気づいたら消えていて、理由が分からない」は、指定事業者では起きない建て付けです。理由が示されないときは、通知の届く先を自分が見ていない可能性のほうが高いと考えてください。

載せる前に決めておく4つ
- 元請けと施主の了解。現場写真の公開を禁じている元請けがあります。契約書に秘密保持の条項がないかを先に見ます
- 写さないものを固定する。表札、郵便物、部屋番号、車のナンバー、管理会社の看板。窓の外に見える隣家も含みます
- 通知の受け口を1つに決める。7日の時計は照会が届いた日から動きます。アプリの通知を切ったままにしておくと、気づいたときには過ぎています
- 元データを手元に残す。投稿が消えたあと、出せるのは自分のカメラの中にあるものだけです
撮り方そのものと、名刺やプロフィールを含めた見せ方の順番は一人親方が名刺とSNSにどこまで手をかけるか|先にやることの順番に、サイトに書く文言でつまずきやすい条文は一人親方がホームページを作る前に見る5点|許可がないと「建設業者」とは書けないにあります。写真に写り込む個人情報を預かる側がどう扱っているかは入居申込書と身分証のコピーはいつまで持てるのか|大家も個人情報取扱事業者ですが参考になります。
まとめ
現場写真は、撮るところまでは自分の裁量です。載せたあとは、法律で決まった時計が動きます。数字は2つだけ覚えてください。照会を受けてから7日、運営会社が申出者へ通知するのも7日。どちらも短いので、通知が届く場所だけは先に決めておく価値があります。
個別の投稿が権利侵害に当たるかどうかは、写り方や文脈で変わります。トラブルになりそうなときは、弁護士や、総務省が案内している違法・有害情報相談センターなどの窓口に確認してください。
(出典:e-Gov法令検索「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」および同施行規則、総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」。いずれも2026年9月12日確認)


