一人親方が独立後に収入が戻らないとき|失業給付の受給期間は最大4年まで止められる
結論からお伝えすると、独立して収入が戻らなかったときの受け皿は、会社を辞めたときの失業給付です。もらえる窓は原則1年で閉じますが、事業を始めた人だけは、その窓を最大4年まで止めておけます。ただし申し出には期限があり、事業を始めた日の翌日から2か月です。ここを過ぎると戻せません。
雇用保険の「1年」は2つある
独立と雇用保険の話には、1年という数字が2回出てきます。別のものです。
- 過去の期間がつながるかの1年…前に被保険者だった期間を通算できるかの線です(雇用保険法22条3項1号)。一度勤めに戻るという選択肢で扱ったのはこちらです
- もらえる窓が開いている1年…基本手当を受け取れる期間です。「基準日の翌日から起算して一年」と定められています(同法20条1項1号)
今回の話は2つ目です。会社を辞めて失業給付を受け取らずに独立した人は、この窓を持ったまま現場に出ていることになります。
事業を始めた人だけが、窓を止められる
2022年7月1日に施行された条文です(公布は2022年3月31日)。
受給資格者であつて、基準日後に事業(その実施期間が三十日未満のものその他厚生労働省令で定めるものを除く。)を開始したものその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める者が、厚生労働省令で定めるところにより公共職業安定所長にその旨を申し出た場合には、当該事業の実施期間(略)は、同条第一項及び第二項の規定による期間に算入しない(雇用保険法20条の2)
「算入しない」がこの条文の中身です。事業をやっている期間は、1年のカウントから外れます。止めておける日数の上限は、条文のかっこ書きで4年から受給期間を引いた日数と決められています。原則1年の人なら最長3年ぶんを止められ、窓が開いている合計は最大4年になります。
基準日より前に事業を始めていて、辞めたあとにその事業へ専念した人も対象に入ります(雇用保険法施行規則31条の5第1号)。
事業をやっている間に、基本手当がもらえるのか?
もらえません。基本手当は「失業している日について」支給されるものです(同法20条1項)。事業をやっている日は失業していないので、給付は出ません。
この特例がしているのは、窓を閉めずに置いておくことだけです。事業をたたんで求職活動に戻ったときに、残っていた日数が使えるようになります。逆にいえば、うまくいっている人には一生関係のない手続きです。それでも出しておく理由は、出せる期間が2か月しかないことにあります。

期限は「事業を始めた日の翌日から2か月」
手続きは省令に書かれています。
第一項の申出は、当該申出に係る者が法第二十条の二に規定する事業を開始した日又は当該事業に専念し始めた日の翌日から起算して、二箇月以内にしなければならない。ただし、天災その他申出をしなかつたことについてやむを得ない理由があるときは、この限りでない(雇用保険法施行規則31条の6第3項)
出すものは受給期間延長等申請書に、登記事項証明書その他その事業を始めたことを証明できる書類と受給資格者証を添えて、管轄のハローワークへ(同1項)。個人事業なら開業届の控えなどが証明になります。独立して最初の2か月は、いちばん現場と段取りで頭がいっぱいの時期です。だから落ちます。
そして事業を廃止・休止したときは、速やかに届け出ることになっています(同5項2号)。止めた窓を開けるのは、この届出です。
再就職手当をもらうと、この特例は使えない
ここは二者択一になっています。省令が特例の対象から外しているものを見てください。
- 事業を開始した日(または専念し始めた日)から30日を経過する日が、受給期間の末日より後になるもの(施行規則31条の4第1号)
- その事業について再就職手当の支給を受けたもの(同2号)
- その事業では自立できないと、管轄のハローワーク所長が認めたもの(同3号)
2番目が実務で効きます。開業でも再就職手当を受け取れる場合がありますが、受け取ると、窓を止める特例のほうは使えません。手元にすぐ入る一時金と、うまくいかなかったときに残す窓の、どちらを選ぶかという話になります。
1番目は言い換えると、窓の残りが30日を切ってから始めた事業は対象外ということです。条文の本文にも「実施期間が三十日未満のもの」を除く旨があります。30日という線が、始める側と続ける側の両方に引かれています。
谷そのものは、別の記事に分けてあります
収入が落ちる時期と戻る時期の中身は、この記事では扱いません。前の会社の給料にかかる住民税と国民健康保険が効いてくる順番は独立1年目に払うお金のカレンダーに、初入金までの動き方は独立した最初の3か月をどう乗り切るかに、仕事の量の波は仕事の波をならす順番に分けています。
発注する側の懐が今どうなっているかも、谷の深さに効きます。木造アパートの家賃は年0.2%しか上がっていないには、家賃が0.2%しか上がっていないのに修繕費が4.1%上がっているという数字が出ています。値上げの交渉をする相手が、どこから払っているかが分かります。

まとめ
- 失業給付をもらえる窓は原則1年(雇用保険法20条1項1号)。過去の期間がつながるかの1年とは別のものです
- 事業を始めた人は、その期間を受給期間に算入しない特例を申し出られます(同法20条の2)。止められる上限は4年から受給期間を引いた日数で、窓の合計は最大4年
- 申し出は事業を始めた日の翌日から2か月以内(施行規則31条の6第3項)
- その事業で再就職手当を受け取ると、この特例は使えません(同31条の4第2号)
- 事業をやっている間に基本手当は出ません。窓を止めておくだけの手続きです
雇用保険の給付は、受給資格や日数が人によって変わります。一般的には上のとおりですが、自分に受給資格が残っているか、何日ぶん止められるかは、管轄のハローワークで確認してください。離職票か受給資格者証を持っていけば、その場で日数が出ます。
独立してすぐの2か月に、この手続きを出した人がどれくらいいるのか。出しておいてよかった人も、要らなかった人もいるはずです。相談・雑談の掲示板で聞かせてください。


