一人親方の車と工具はいつ経費になるか|10万・20万・30万の3つの線

ホームセンターのレジで、税抜9万5,000円のインパクトドライバーを出す。支払う金額は10万4,500円。この工具が「10万円未満」に入るかどうかは、実はインボイスの登録をしているかどうかで変わります。同じ工具、同じ値札で、その年に全額落ちる人と、3年に分けて落とす人が出るということです。

結論からお伝えすると、車と工具の経費には10万円・20万円・30万円という3つの線があります。そしてその線を税抜で見るか税込で見るかは、自分の経理方式で決まります。この記事では、国税庁の案内と条文で確かめた線の位置、車の年数、中古の扱い、家事按分の考え方を順に並べます。金額の判定は最後は個々の事情によるので、迷ったら税務署か関与税理士に確認してください。

工具や車が経費になる金額の線の一覧。取得価額10万円未満は全額、使える期間1年未満も全額、10万円以上20万円未満は3年で3分の1ずつ、青色申告なら30万円未満を合計300万円まで、判定額は税込か税抜かで動く。

10万円未満は、その年に全部落ちる

国税庁タックスアンサー2100「減価償却のあらまし」には、こう書かれています。

  • 使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額をその年分の必要経費にする(注1)
  • 取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産は、一定の要件のもとで取得価額の合計額の3分の1を3年間の各年分で必要経費に算入できる(注2)=いわゆる一括償却資産
  • 一定の要件を満たす青色申告者が取得した10万円以上30万円未満の資産は、一定の要件のもとで合計300万円に達するまでその年分の必要経費に算入できる(注3)

ここで大事なのは、「取得価額」に本体価格だけでなく引取運賃・購入手数料・業務の用に供するための費用が入ることです(タックスアンサー2106)。9万8,000円の機械に送料3,000円がかかれば、その時点で10万円を超えます。

免税事業者は「税込」で線を見る

同じタックスアンサー2100の注5に、はっきり書かれています。

「取得価額の判定に際し、消費税の額を含めるかどうかは納税者の経理方式によります。(中略)なお、免税事業者の経理方式は税込経理になります。」

つまり冒頭の工具は、こうなります。

  • 税抜経理(課税事業者)…判定額95,000円 → 10万円未満なので、その年に全額
  • 税込経理(免税事業者)…判定額104,500円 → 10万円以上。3年に分けるか、青色なら30万円未満の特例

インボイスの登録をしていない一人親方ほど、この線を越えやすいということです。工具は税抜9万円台の商品が多いので、実務ではかなりの頻度で起きます。インボイスの登録の考え方は一人親方とインボイス制度|登録するかどうかの判断にまとめてあります。

30万円未満の特例は、条文の期限を確かめてから使う

いわゆる「30万円未満・年300万円まで」の特例は、租税特別措置法第28条の2(中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例)です。条文の要件は次のとおりです。

  • 対象は青色申告書を提出する中小事業者のうち政令で定めるもの
  • 取得価額が30万円未満の減価償却資産(10万円未満のものと、一括償却の適用を受けるものは除く)
  • その年の合計額が300万円を超えるときは、300万円に達するまでが限度。開業年・廃業年は月数で按分
  • 確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書の添付がある場合に限り適用(同条第3項)

ここに注意点があります。e-Gov 法令検索で現行の条文を確認すると(2026年8月22日時点)、対象期間は「平成18年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得し」と書かれています。この特例はこれまで何度も期限が延ばされてきましたが、いま条文に載っている期限は令和8年3月31日です。令和8年4月以降に買った30万円未満の工具や車をこの特例で落とせるかどうかは、税制改正の内容で決まります。30万円近い買い物を予定しているなら、注文する前に国税庁の最新の案内か税務署で必ず確認してください。10万円未満の全額計上と、10万円以上20万円未満の3年(一括償却)は、この期限とは別の仕組みです。

その年に全額落ちるものと年をまたいで落とすものの対比。前者は取得価額10万円未満、使える期間1年未満、青色申告で30万円未満。後者は10万円以上20万円未満、30万円以上のもの、白色申告で20万円以上。

車は何年で落とすのか

耐用年数は国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」(減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表)に載っています。一般用の車両・運搬具のうち、職人が使いそうなところだけ抜きます。

  • 小型車(総排気量が0.66リットル以下のもの)…4年(=軽トラ・軽バン)
  • 貨物自動車のうちダンプ式のもの…4年その他のもの…5年
  • 上記以外のその他のもの…6年
  • 2輪・3輪自動車…3年/自転車…2年/リヤカー…4年

同じ車体でも、車検証の用途が貨物か乗用かで年数が変わります。工具側は同じ表の「工具」の区分で、測定工具・検査工具が5年、治具・取付工具が3年、切削工具が2年と細目ごとに決まっています。表に「電動工具」という細目はありませんので、どの区分に当てるかは中身で判断することになります。ここは自己流で決めず、税務署か関与税理士に確認するのが早いところです。

4年落ちの軽トラは2年で落とせるのか?

中古で買った場合、減価償却資産の耐用年数等に関する省令第3条に「中古資産の耐用年数等」の定めがあります。使用可能期間を見積もるのが難しいときは、次の年数を使えます(同条第1項第2号)。

  • 法定耐用年数の全部を経過した資産…法定耐用年数の20%に相当する年数
  • 一部を経過した資産…(法定耐用年数−経過年数)+(経過年数の20%)
  • その年数が2年に満たないときは2年

法定4年の軽トラを4年落ちで買った場合、4年×20%=0.8年となり、2年に満たないので2年です。2年落ちなら(4−2)+(2×0.2)=2.4年となり、1年未満の端数は切り捨てて2年として扱うのが一般的です。ただし、業務に使えるようにするために支出した金額が取得価額の50%を超える場合は、この簡便法は使えません(同条第1項ただし書)。エンジンや荷台に大きく手を入れて買う場合は、ここを先に確認してください。車そのものの選び方は未経験が確かめる職人の車の免許で扱っています。

プライベートでも使う車と工具はどうするか

国税庁タックスアンサー2210「やさしい必要経費の知識」には、家事関連費についてこう書かれています。

「この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。」

ポイントは「取引の記録などに基づいて」「明らかに区分できる」の2つです。あとから「だいたい8割は仕事」と決めるのではなく、区分の根拠を残しておくという話になります。走行距離のメモ、現場ごとの日付、給油のレシートを日付順に置いておくだけでも根拠になります。事業用と私用を分ける考え方は一人親方が事業用の口座とカードを分ける理由で書いたことと同じで、分けておくと説明の手間が消えます。

償却方法の届出には期限がある

タックスアンサー2100によれば、償却方法は資産の種類ごとに選び、新たに業務を始めた場合はその翌年の3月15日までに所轄の税務署長に届け出ることになっています。届出がない場合は法定の償却方法で計算し、法定の償却方法は一般的には定額法です。定率法を使いたいなら、この届出が要るということになります。方法を変えるときは、変更しようとする年の3月15日までに申請して承認を受けます。

まとめ

  • 線は10万円未満(全額)/10万円以上20万円未満(3年で3分の1)/青色で30万円未満(年300万円まで)の3つ
  • 免税事業者は税込で判定する。税抜9万5,000円の工具は、免税なら10万円以上になる
  • 30万円未満の特例は、条文上の期限が令和8年3月31日(2026年8月22日時点のe-Gov現行条文)。買う前に最新の案内を確認する
  • 軽トラ4年・貨物のダンプ式以外5年・その他6年。中古は簡便法で最短2年
  • 私用と混ざるものは「明らかに区分できる金額」だけ。根拠の記録を残す

税務の取扱いは個々の事情で変わります。この記事は一般的な整理で、判断そのものは所轄の税務署や関与税理士に確認してください。経費にできるものの全体像は一人親方の確定申告|経費にできるもの、領収書の残し方は一人親方の領収書とインボイスの保存にまとめてあります。

実際にどう処理しているかを他の一人親方に聞いてみたい方は、相談・雑談のフォーラムをご覧ください。

出典:国税庁タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」/No.2106「定額法と定率法による減価償却」/No.2210「やさしい必要経費の知識」/同「主な減価償却資産の耐用年数表」/e-Gov 法令検索(租税特別措置法第28条の2、減価償却資産の耐用年数等に関する省令第3条。いずれも2026年8月22日確認)

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