脚立の作業は「高所」に入らないのか|一人親方が知っておく2mと1.5mの線

結論からお伝えすると、脚立の作業も「墜落・転落」として見られています。作業床や手すりの義務は高さ2mからですが、昇降するための設備は1.5mを超えたら必要と条文に書かれており、線は1本ではありません。そして元請けが用意した足場や作業床については、一人親方が使う場合も注文者側に措置の義務があります。

国の調査項目に「2m未満も含む」と書いてある

2026年8月7日、厚生労働省が「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)」の結果を公表しました。この中に建設業だけを取り出した表があります。

  • 建設業の事業所のうち、労働者の安全確保に関しリスクアセスメントに取り組んでいる割合:89.8%(前年90.0%)
  • 取り組んでいる事業所の内容(複数回答)の1位:「高所からの墜落・転落(2m未満も含む。)」92.3%
  • 2位:「作業に用いる建設機械等の危険性」92.1%、3位「交通事故」85.2%、「足場や型枠支保工等の仮設物の危険性」79.3%

調査項目の名前そのものに「2m未満も含む」と入っています。現場で「2m以上が高所作業」と言われることがありますが、危険として数えるときの範囲はもっと下から始まっている、ということです。(出典:厚生労働省「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」第11表)

この調査の対象は常用労働者を10人以上雇用する民営事業所で、有効回答は8,054事業所です。一人親方も、10人未満の会社も、この89.8%には入っていません。入っていないから関係ない、ではなく、入っている側(元請け)がこの基準で現場を見ていると読むのが実務的です。

高さで変わる4つの決まりを並べた図。作業床と囲いは2メートル以上、昇降設備は1.5メートル超、脚立の角度は75度以下を示した図解

2mと1.5m、どこで線が変わるのか?

労働安全衛生規則の条文を並べます。

  • 第518条:高さが2m以上の箇所で墜落の危険があるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設ける。困難なときは防網を張る、要求性能墜落制止用器具を使わせる等
  • 第519条:高さが2m以上の作業床の端・開口部等には囲い、手すり、覆い等を設ける
  • 第526条高さ又は深さが1.5mを超える箇所で作業を行うときは、安全に昇降するための設備等を設ける。設けられたときは、作業に従事する者はそれを使わなければならない

墜落防止は2mから、昇降設備は1.5m超から。2mという数字だけを覚えていると、1.5m台の段差を「まだ低い」と扱ってしまいます。(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」/2026年8月13日時点)

脚立そのものにも条件がある

第528条は、使ってよい脚立の条件を4つ挙げています。

  1. 丈夫な構造であること
  2. 材料に著しい損傷、腐食等がないこと
  3. 脚と水平面との角度を75度以下とし、折りたたみ式は角度を確実に保つための金具等を備えること
  4. 踏み面が、作業を安全に行うため必要な面積を有すること

移動はしごは第527条で幅30cm以上、すべり止め装置の取付けその他転位を防止する措置と決められています。開き止め金具が壊れた脚立や、幅の足りない自作のはしごは、この時点で外れます。

一人親方は「対象外」なのか

ここが誤解されやすいところです。労働安全衛生法第31条第1項(注文者の講ずべき措置)の条文には、こう書かれています。

「その請負人に係る作業従事者(労働者及び労働者と同一の場所において仕事の作業に従事する労働者以外の作業従事者に限る。)に使用させるときは、当該建設物等について、労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない」

「労働者以外の作業従事者」が条文に明記されています。元請けが用意した足場や作業床を一人親方が使う場合も、注文者側の措置の対象になるという書き方です。具体的には次の条文につながります。

  • 第653条:注文者は、作業床等の高さ2m以上で墜落のおそれのある箇所に囲い、手すり、覆い等を設ける。第2項では、作業床で高さ又は深さが1.5mを超える箇所に昇降設備等
  • 第655条:注文者は足場について、最大積載荷重を定めて見やすい場所に表示し、悪天候・中震以上の地震・組立てや変更の後には点検者を指名して作業開始前に点検させる。点検の結果と点検者の氏名を記録し、仕事が終わるまで保存する

ただし、一人親方本人に事業者としての義務が生じるのは、人を使ったときです。自分ひとりで請けている間は、法律上の名宛人は注文者側になります。この線引きは契約や現場の実態で判断が分かれるため、個別の判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。元請けから求められる書類は一人親方が元請けから求められる書類一式にまとめています。

自分で持ち込む脚立と元請けが用意した足場を比べた図。それぞれで見るべき点と、一人親方が使う場合も注文者の措置の対象になることを示した図解

現場で今日からできる3つ

  1. 足場に入る前に、最大積載荷重の表示を探す。表示は注文者が出すものです。見当たらなければ元請けに聞いてよい
  2. 1.5mを超える段差の上り下りに何を使うか決めておく。単管やコンパネの端を踏んで上がるのは、昇降設備ではありません
  3. 脚立は開き止め金具から見る。天板に乗らない、開き角度を無理に広げない、脚のガタつきを養生テープで済ませない

夏場は同じ高さでも足元が滑りやすくなります。体調と現場の環境については一人親方は熱中症対策の義務化の対象なのかに書きました。現場のルールで困っている方は相談・雑談の掲示板に同じ立場のやり取りがあります。

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