一人親方が仕事の波をならす順番|国の調査では3月に人が余り、7月に足りなくなる
8月の第2週。予定表を開くと、3日分が白いまま残っています。電話は鳴らない。材料は倉庫にあるのに、入る現場がない。こういう週が年に何度か来ることは分かっていても、来てから動くと、たいてい単価を下げる方向にしか動けません。
結論からお伝えすると、仕事の波は勘ではなく数字で見えます。国土交通省の建設労働需給調査を月別に並べると、1月から3月にかけて人が余り、7月と10月に足りなくなるという形が2年続けて出ています。「3月が一番忙しい」という感覚とは逆です。ただしこの調査に内装・大工・塗装は入っていません。ここを外すと読み違えるので、先に押さえてください。

まず、いまの需給がどうなっているか
国土交通省の「建設労働需給調査結果(令和8年6月調査)」(2026年7月27日公表)によると、全国8職種の過不足率は1.0%の不足でした。前月(5月・1.2%の不足)から0.2ポイント、前年同月(1.1%の不足)から0.1ポイント、いずれも不足幅が縮んでいます。今後の見通し(8月・9月)は「普通」です。
職種別に見ると、鉄筋工(建築)が1.9%の過剰で、そのほかの職種は不足。配管工が2.7%、型わく工(建築)が2.1%の不足と、職種の間でも向きが分かれています。
ここが読み違えやすいところです。この調査の8職種は、型わく工(土木・建築)・左官・とび工・鉄筋工(土木・建築)・電工・配管工です。内装仕上げ・大工・塗装は調査対象に入っていません。「建設業は人手不足」という一言でまとめると、自分の職種の話なのかどうかが分からなくなります。
3月に人が余っているのはなぜか
同じ調査の推移表(8職種計・原数値)から、直近2年の月別を並べます。数字が大きいほど人が足りない状態です。
- 令和6年:7月2.0%/8月1.2%/9月1.6%/10月2.3%/11月0.9%/12月0.6%
- 令和7年:1月0.6%/2月0.3%/3月0.1%/4月0.8%/5月0.5%/6月1.1%/7月1.6%/8月0.9%/9月1.1%/10月0.8%/11月0.2%/12月0.7%
- 令和8年:1月0.0%/2月0.3%/3月は0.1%の過剰/4月0.6%/5月1.2%/6月1.0%
2年とも、年の谷は1月から3月にあります。令和8年3月にいたっては、8職種計で人が余っている状態でした。逆に締まるのは7月と、年によっては10月です。
「引っ越しシーズンの3月が一番忙しい」という実感と、この数字は正面からぶつかります。ぶつかる理由は職種です。賃貸の原状回復は、退去が集中する2月から4月が山になります。一方で調査対象の8職種は土木・躯体・設備が中心で、年度末は工事が完成に向かう時期、新規の着工は年度が替わってから動き出します。同じ「建設業」でも、山と谷の位置が逆になるということです。
読むときの注意をもう1つ。この調査は毎月10日から20日までの間の1日(日曜、休日を除く)を調査対象日としています。月全体の平均ではなく、その1日の状態です。国土交通省自身が原数値と季節調整値を併記していることからも、季節の波があることは前提になっています(令和8年6月は原数値1.0%に対し季節調整値0.9%)。

閑散期に単価を下げるとどうなるか
谷が来てから動くと、出てくる手は「安くしますから入れてください」になりがちです。ここは止めたほうがいい理由がはっきりしています。
一度下げた単価は、次の繁忙期に戻せません。相手にとっては、その金額が「あなたの単価」として台帳に載ります。次に忙しくなったとき、戻す交渉には理由と資料が要ります。閑散期の3日分を埋めるために、その後1年分の単価を下げることになりかねません。
参考までに、応援で他社の現場に入る場合、ひととおり任せられる職人で1日25,000円程度が標準、複数の工種をこなせる多能工なら1日40,000円、またはそれ以上という水準です。量産クロスの手間請けなら1㎡500円が下限で、条件の悪い現場ならこれ以上を求めていい金額です。谷の週にこの下を切ると、繁忙期の自分の首を絞めます。単価を上げ直すときの材料の集め方は単価交渉に使う材料の集め方にまとめています。
波をならす4つの手
1. 自分の12か月を書き出す
国の統計より先に見るべきは、自分の売上です。月ごとの売上と稼働日数を12か月分並べると、山と谷が数字で出ます。「夏は暇」ではなく「7月下旬から8月中旬までの3週間が谷」まで絞れると、対策の打ち方が変わります。まずは去年の請求書を月ごとに合計するだけで十分です。
2. 取引先の業種をずらす
取引先が全部同じ業種だと、谷も全部同じ月に来ます。賃貸の原状回復(2〜4月が山)と、店舗の改装(休業に合わせる)と、戸建てのリフォーム(年末年始や梅雨を避ける)では、山の位置が違います。山が重ならない相手を1社入れておくのが、いちばん確実な平準化です。取引先の増やし方は元請けに頼らず仕事を取る5つのルートを参照してください。
3. 谷が来る前に、谷の仕事を押さえる
閑散期に入る工事は、実は先に決まっていることが多いものです。空室のまま止まっている部屋、急がない外構、店舗の休業日にやる小工事。3か月先の予定表を見て、白い週が見えた時点で声をかける。谷に入ってから探すと、足元を見られます。日頃から思い出してもらう関係の作り方は紹介で仕事を回す職人がやっていることにまとめています。
4. 応援に出る側にも回れるようにしておく
自分の現場が空いた週に、他社の応援に入れる状態にしておくと、谷が浅くなります。ここで効くのが工種の幅です。1つの職種だけだと、その職種が緩む月には出る先も緩んでいます。山の位置が違う職種を1つ持っている人は、谷の週に別の山へ移れます。25,000円と40,000円の差は、腕の差というより回れる範囲の差です。
まとめ
- 建設労働需給調査の8職種計は、1〜3月が谷、7月と10月が山という形が2年続いている
- ただし内装・大工・塗装は調査対象外。原状回復は2〜4月が山で、向きが逆になる
- 谷に入ってから単価を下げると、次の繁忙期に戻せない
- 先にやるのは、自分の12か月を数字にすること。次に取引先の業種をずらすこと
自分の職種でいつ谷が来るかは、同じ工種の人に聞くのが早いこともあります。仕事を探している人の掲示板には、時期ごとの募集も出ています。
出典:国土交通省「建設労働需給調査結果(令和8年6月調査)」(2026年7月27日公表)


