一人親方が独立1年目に払うお金のカレンダー|きついのは1年目ではなく2年目
独立して3か月目の6月。郵便受けに市役所からの封筒が入っています。開けると、納付書が4枚。金額の欄に並んでいるのは、事業を始めてからの利益ではなく、辞めた会社でもらっていた給料にかかる住民税です。仕事はまだ助走の段階なのに、支払いだけは前の勤め先の実績で決まっている——独立1年目に多くの人がここでつまずきます。
結論からお伝えすると、独立1年目に出ていくお金は「前年の自分」で決まり、2年目に出ていくお金は「1年目の自分」で決まります。そして谷が深いのは、たいてい1年目ではなく2年目です。理由は、住民税・国民健康保険・予定納税・消費税の4つが、2年目にそろって重なるからです。

最初に来るのは、前の会社の給料にかかる住民税
住民税は、その年の1月1日に住んでいた市区町村が課税します(地方税法318条)。課税の元になるのは前年の所得です。
所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とする。(地方税法313条1項)
会社員のときは、この住民税を毎月の給料から天引きされていました(特別徴収)。辞めると天引きができなくなるので、残りを自分で払うことになります。普通徴収の納期は法律で決まっていて、6月・8月・10月・翌年1月の4期です(地方税法320条)。実際の納期日は市区町村の条例で決まるので、通知書で確認してください。
辞める月で、払い方が法律上変わります
ここは知られていませんが、退職した月によって扱いが違います(地方税法321条の5第2項)。
- 6月1日から12月31日までに辞めた場合:翌月以降の分は会社が徴収しなくてよくなり、原則として自分で納付書で払います。本人が申し出れば、残りをまとめて最後の給与から引いてもらうこともできます
- 翌年1月1日から4月30日までに辞めた場合:原則として一括徴収です。5月31日までに支払われる給与や退職手当から、残額の全額が引かれます
つまり年明けから4月に辞めると、最後の給料から住民税の残り全部が引かれるということです。手取りを当てにして独立の日を決めていると、開業資金がここで削られます。会社を辞める前に済ませる5つと合わせて、辞める月を決める材料にしてください。
国民健康保険も、前年の所得で計算されます
国民健康保険(保険税の形をとる市区町村の場合)の所得割は、基礎控除後の総所得金額等に按分して算定されます(地方税法703条の4第6項)。その総所得金額は313条1項と同じく前年の所得です。
会社の健康保険から国民健康保険に切り替えた1年目は、会社員時代の給与に対する保険料が請求されます。事業がまだ立ち上がっていない時期に、いちばん稼いでいたときの水準で来る、ということです。納期は市区町村の条例で決まり、6月または7月から翌年3月までの8〜10回に分けるところが多くなっています。自分の市区町村の納期は、必ず納入通知書で確かめてください。
なお、会社の健康保険を任意継続するか、国民健康保険にするか、建設国保に入るかで金額は変わります。どれが有利かは扶養家族の数と前年の所得で逆転するので、切り替える前に両方の金額を出してもらって比べるのが確実です。
2年目の7月と11月に、予定納税が来ます
1年目の所得税は、翌年2月16日から3月15日までの確定申告でまとめて納めます。ここまでは想像がつきます。見落とされるのが予定納税です。
国税庁のタックスアンサーNo.2040によると、予定納税基準額が15万円以上になる人は、その年の所得税の一部を前払いすることになります。金額は予定納税基準額の3分の1を2回。納期は次のとおりです。
- 第1期分:その年の7月1日から7月31日まで
- 第2期分:その年の11月1日から11月30日まで
金額は税務署から6月15日までに通知されます。1年目の申告で所得が出た人は、その年の7月から、まだ確定していない今年分の税金を前払いし始めるわけです。3月に納税を終えたばかりなのに、4か月後にまた来る——これが2年目の資金繰りを一番つまずかせます。
収入が前年より大きく落ちる見込みなら、予定納税額の減額申請という手続きがあります(根拠は所得税法104条から114条)。使えるかどうかは状況によるので、所轄の税務署に確認してください。
インボイス登録をしているなら、3月31日にもう1本あります
消費税の申告期限は、法人と個人事業者で違います。個人事業者については特例があり、その年の翌年3月31日です(租税特別措置法86条の4第1項)。所得税の3月15日とは16日ずれているので、まとめて済ませるつもりでいると期限を落とします。
免税事業者は対象外ですが、インボイスの登録番号を取った時点で課税事業者になっています。登録するかどうかの判断そのものは一人親方とインボイス制度にまとめています。

なぜ2年目のほうがきついのか
並べると理由が分かります。
- 1年目:前職の住民税+前職の所得で計算された国保。ただし事業の所得税はまだゼロで、予定納税も消費税の申告もありません
- 2年目:1年目の事業所得にかかる所得税を3月に納め、住民税も6月から事業所得ベースに変わり、7月と11月に予定納税、3月31日に消費税。4つが全部乗ります
1年目に「思ったより払えた」と感じても、それは事業の税金がまだ来ていないだけ、ということがあります。1年目の利益は、使い切らずに置いておく。具体的には、確定申告で出た所得税額と同じくらいの金額を、翌年分としてもう一度用意しておくくらいの感覚です。事業用の口座とカードを分けると、この積み立てが目に見えるようになります。
1年の流れを月で並べる
- 1月:住民税の第4期。法定調書・支払調書が届き始める
- 2月16日〜3月15日:所得税の確定申告と納付
- 3月31日:消費税の申告と納付(課税事業者の場合)
- 6月:住民税の納税通知書が届く(第1期)。予定納税の通知も15日まで
- 7月1日〜31日:予定納税の第1期分。人を雇っているなら労働保険の年度更新(6月1日〜7月10日)
- 8月:住民税の第2期
- 10月:住民税の第3期
- 11月1日〜30日:予定納税の第2期分
- 毎月:国民年金保険料。国民健康保険は市区町村の定める納期ごと
税務や社会保険の取り扱いは、事業の形や地域によって変わります。一般的にはこの流れですが、自分の金額と納期は、税務署・市区町村の窓口・年金事務所で必ず確認してください。特に予定納税の減額申請と国保の軽減は、申請しなければ適用されません。
独立してからの現金の動かし方は独立した最初の3か月をどう乗り切るかにまとめています。実際に払った金額や時期は人によって違うので、相談・雑談の掲示板で先に独立した人の話を読んでおくと、備える金額の見当がつきます。
出典:地方税法/租税特別措置法(e-Gov法令検索・2026年8月17日時点の現行条文)/国税庁タックスアンサーNo.2040「予定納税」


