一人親方が名刺とSNSにどこまで手をかけるか|先にやることの順番

現場の休憩中、他職の職人から「今度うちの応援も入ってもらえますか」と言われて、ポケットから名刺を出す。折れていて、屋号と携帯番号しか書いていない。相手は受け取ったあと、少し困った顔で裏を見ます。何ができる職人なのかが、どこにも書いていないからです。

結論からお伝えすると、名刺とSNSはやる順番が決まっています。先に手をかけるのは名刺で、SNSは後回しでかまいません。理由は単純で、職人の仕事は「知らない人に見つけてもらう」よりも会った人・一度使った人から次が来る割合が圧倒的に高いからです。SNSは新規開拓の道具ではなく、名前を聞いた相手が確かめに来る場所と考えると、手のかけ方を間違えません。

名刺に入れる6項目。屋号と氏名、職種と対応できる工種、携帯番号、対応エリア、連絡手段のQRコード、保険や許可の有無

名刺に入れる6項目

デザインに凝る必要はありません。入っているかどうかだけが問題です。

  • 屋号と氏名。 個人名だけだと、あとで思い出すときの引っかかりがありません
  • 職種と、対応できる工種の範囲。 ここが最重要です。「内装」だけでは足りません。クロス・床(CF・フロアタイル)・クッション材の下地処理までのように、頼める範囲が読めるように書きます
  • 現場で出られる携帯番号。 固定電話しか書いていないと、急ぎの応援の連絡先から外れます
  • 対応エリア。 「関東一都三県」ではなく「さいたま市を中心に片道1時間」のように、相手が判断できる書き方にします
  • 連絡手段。 LINEのQRコードを裏面に入れておくと、その場で登録まで終わります
  • 保険・許可・登録の有無。 労災の特別加入、賠償責任保険、建設業許可、建設キャリアアップシステムの登録など。元請けが取引の前に必ず確認する項目なので、先に書いておくと1往復減ります

ここに書いた「頼める範囲」は、実際に仕事を受けるときの範囲の話とつながっています。どこまでが自分の仕事かを決めておく話は一人親方が見積もりを出す前に決める4つにまとめています。

SNSはやらないと仕事が来ないのか?

来ます。ただしSNSがなくても来ますし、SNSだけで食えている職人は多くありません。仕事の入口は大きく5つに分かれ、SNSはそのうちの1つにすぎません(一人親方が元請けに頼らず仕事を取る5つのルート)。

それでもSNSに意味があるのは、次の場面です。

  • 名刺を渡した相手が、あとで検索したとき。 何も出てこない職人と、直近の現場写真が並んでいる職人では、次に声がかかる確率が変わります
  • 紹介された相手が、頼む前に確かめたいとき。 紹介は「大丈夫な人か」の確認とセットで動きます(一人親方が紹介で仕事を回すためにやっていること
  • 職人同士でつながるとき。 元請け探しより先に、応援を頼み合える相手が見つかることのほうが多いです

つまりSNSは、「集客」より「身元確認」と「横のつながり」に効くのが実際のところです。フォロワーの数を追いかける必要はありません。

手をかける順番は4段階

  1. 名刺を作り直す(今日できる)。 上の6項目を入れる。折れないように名刺入れを持つ。これだけで印象が変わります
  2. 連絡の返し方を決める(今週できる)。 現場で出られない時間帯を決めておき、折り返す時刻を留守番電話かメッセージで伝える。取りこぼしはSNSの有無ではなく返信の速さで起きます
  3. 写真をためる(毎日1分)。 施工前・施工中・施工後を同じ位置から撮る。手順は一人親方が次の仕事につながる現場写真を撮る手順のとおりで、2分あれば終わります。写真がないとSNSもホームページも作れません
  4. SNSを1つだけ始める(写真が30枚たまってから)。 複数を同時に始めると全部止まります

3番目と4番目を逆にする人が多いのですが、先に始めると「載せるものがない」で止まります。写真は仕事をしていれば自然にたまるので、順番を守ったほうが続きます。

SNSに載せるときの3つの線引き

写真は自分の物のように見えて、他人の建物と他人の仕事が写っています。次の3つは載せる前に必ず確認します。

  • 元請け・施主の了解。 現場写真の公開を禁じている元請けもあります。聞かずに載せて取引が終わるのは、いちばん高い授業料です
  • 場所が特定できるものを写さない。 表札、部屋番号、郵便受け、管理会社の看板、窓から見える隣家。図面や工程表の写り込みも同じです
  • 他職の仕事を自分の実績に見せない。 仕上がりの写真には他の職人の仕事が写ります。自分がやった工種を書き添えるだけで防げます
名刺は会った瞬間に効き、SNSは会ったあとに効く。役目とタイミングの違いを並べた比較図

名刺とSNS、役目が違う

同じ「宣伝」に見えますが、動くタイミングが違います。名刺は会った瞬間に効き、SNSは会ったあとに効きます。だから両方あると強く、どちらか1つなら名刺が先です。

ホームページやマッチングの仕組みを使うかどうかは、この4段階が回り始めてから考えれば間に合います(マッチングサイトは職人に使えるのか)。

まとめ

名刺は6項目、SNSは4番目、写真は毎日1分。この形にしておくと、仕事が減った月にあわてて何かを始める必要がなくなります。閑散期に効くのは、忙しい時期にためた写真と、渡してきた名刺の枚数です。

どのSNSを使っているか、名刺に何を書いているかは人によってかなり違います。他の一人親方のやり方を聞いてみたいときは、「仕事を探してる」の掲示板で聞いてみてください。使い方はハンターズガイドにあります。

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