国民健康保険と建設国保、どちらが得か
結論からお伝えすると、国民健康保険と建設国保のどちらが得かは、制度の優劣では決まりません。分かれるのは①自分の所得の水準、②家族の人数と年齢、③加入の要件を満たせるか、この3点です。同じ職種の2人が、まったく逆の結論になることが普通に起きます。
ここで建設国保と呼んでいるのは、建設業に従事する人を対象にした国民健康保険組合のことです。全国に複数あり、地域ごとの支部を通じて加入します。市区町村が運営する国民健康保険とは、保険料の決め方がそもそも違います。
保険料の決め方が根本的に違う
市区町村の国民健康保険は、前年の所得をもとに計算されます。稼いだ年の翌年に保険料が上がる仕組みです。一方、建設業の国民健康保険組合は、組合が定めた区分ごとの保険料を納める形が中心です。所得が増えても保険料が連動して跳ね上がる形にはなっていない組合が多くあります。
この違いが、そのまま結論を左右します。どちらが得かは制度が決めているのではなく、自分の去年の所得が決めています。去年得だった選択が、今年は損になることがあります。だから「先輩が建設国保だから」で選ぶのが一番危ない選び方です。
先に、よくある失敗から
- 独立初年度に建設国保へ入った。前年は勤め人で所得が低く、市区町村の国保のほうが安く済む年だったことに後から気づいた
- 組合の保険料だけを比べ、組合費や共済の掛け金が別にかかることを勘定に入れていなかった
- 家族4人で加入したところ、家族の分も人数ごとにかかることを想定しておらず、月の負担が思っていた額と離れた
- けがで1か月休んだとき、市区町村の国保には休業中の手当の仕組みが基本的にないと知った
いずれも、比べる項目が足りなかったことによるものです。制度を選び間違えたのではなく、比べ方を間違えています。
特に独立1年目は判断が難しい時期です。前年の所得は勤め人として得たものなので、独立後の稼ぎとは水準が違います。それなのに保険料は前年の数字で決まる。この時間のずれを頭に入れておかないと、2年目に負担が跳ねて驚くことになります。
比べる項目を表にする
| 比べる点 | 市区町村の国民健康保険 | 建設業の国民健康保険組合 |
|---|---|---|
| 保険料の決め方 | 前年の所得に応じて計算される | 組合が定めた区分による |
| 所得が増えたとき | 翌年の保険料が上がる | 連動しない形が多い |
| 家族の分 | 世帯の人数と所得で計算 | 人数分かかる。区分は組合による |
| 休業したときの手当 | 原則として仕組みがない | 組合により用意されている場合がある |
| 加入の要件 | 住んでいれば入れる | 建設業に従事していることなどの条件がある |
| 手続きの窓口 | 市区町村の国保担当 | 組合の支部 |
保険料の実額は、住んでいる市区町村と組合の両方でまったく違います。表の右側にも左側にも金額を書かないのは、書いた瞬間に誤解を生むからです。金額は必ず2か所に見積もりを取ってください。市区町村の国保担当窓口と、加入を検討している組合の支部です。どちらも前年の所得が分かる資料を持っていけば、その場で試算してもらえます。
切り替えるタイミングはいつがいいのか?
所得が伸びてきた年の翌年が、いちばん差が出やすい時期です。所得に連動する側の保険料が上がるためです。逆に仕事が落ち込んだ年の翌年は、連動する側が有利に振れます。
ただし、行ったり来たりを毎年繰り返すのは現実的ではありません。組合には加入の要件と手続きがあり、脱退と再加入を繰り返せる前提の制度ではないからです。判断は数年の見通しで立てるほうが落ち着きます。手続きの可否と回数の扱いは組合ごとに違うため、支部に直接確認してください。
金額以外に見ておく2つのこと
1つは、休んだときの備えです。働けない期間の収入が止まるのは一人親方の最大の弱点で、そこに手当の仕組みがあるかどうかは金額差より効くことがあります。もう1つは、現場で保険の加入状況を確認される場面が増えていることです。作業員名簿に加入状況を書く欄があり、空欄のままでは入場を断られる現場もあります。どちらに入っていても、加入していることを証明できる状態にしておくのが前提になります。
それから、家族の扱いも先に確かめてください。配偶者や子どもの分がどう計算されるかは、市区町村と組合で考え方が違います。人数が多い世帯では、この一点だけで年間の負担が大きく変わります。窓口で試算を頼むときは、必ず世帯全員の人数と年齢を伝えてください。自分の分だけで比べても答えは出ません。
まとめ
比べる項目は6つ、見積もりを取る窓口は2か所。これだけで答えは出ます。人から聞いた金額で決めないでください。保険料の計算方法や給付の内容は年度で改定されるため、最終判断は市区町村の国保担当窓口と組合の支部で確認したうえで行ってください。
独立の準備段階でそろえておくことについては未経験から内装職人になるにはもご覧ください。


