常用と手間請け、どちらを選ぶか
結論からお伝えすると、常用と手間請けのどちらを選ぶかは、腕の良し悪しではなく「1日の施工数量が読める現場かどうか」で決まります。数量が読めるなら手間請け、読めないなら常用。この1点で判断できます。
クロスの場合は分岐点を数字で出せるので、感覚ではなく計算で決められます。必要なのは、自分が1日に何平米貼れているかという数字が一つあるだけです。
先に、よくある失敗から
「腕が上がったから手間請けに切り替える」という流れで動いて、逆に落ちる人がいます。
- 常用18,000円から手間請けに切り替えたが、割り当てが飛び現場ばかりで日当換算15,000円台に落ちた
- 手間請けで数量は出たが、月に3日前工程待ちで入れず、常用時代より月収が下がった
- 常用に戻したところ、今度は残業しても日当が変わらず、時間あたりでは手間請けのほうが良かったと気づいた
- 両方受けようとして、常用の日と手間請けの日がぶつかり、どちらの信用も落とした
切り替え自体が失敗だったのではありません。切り替える前に、自分の1日の施工量を数えていなかっただけです。
分岐点を計算する
常用の日当を上回るために必要な施工数量は、割り算1回で出ます。日当 ÷ 平米単価です。
| 常用の日当 | 単価300円のとき | 単価350円のとき | 単価400円のとき |
|---|---|---|---|
| 15,000円 | 50平米 | 43平米 | 38平米 |
| 18,000円 | 60平米 | 52平米 | 45平米 |
| 22,000円 | 74平米 | 63平米 | 55平米 |
表の数字を、自分が実際にこなしている量と比べてください。日当18,000円・単価350円の条件なら、1日52平米を安定して超えられるかどうかが判断の線になります。超えられない現場が続くなら、常用のほうが手元に残ります。
月単位に直すと、さらにはっきりします。分岐点が52平米の条件で実際に60平米こなせているなら、1日あたり2,800円のプラス。月20日で5万6千円です。逆に45平米しか拾えない現場なら1日2,450円のマイナスで、月4万9千円。単価は同じでも、現場の中身だけで月10万円の幅が出ます。
ただし手間請け側には、移動・処分費・道具の消耗が乗ります。分岐点はもう少し上に置いておくのが安全で、表の数字に5〜10平米足して考えると実態に近づきます。
自分にはどちらが向いているのか?
| 状況 | 常用が向く | 手間請けが向く |
|---|---|---|
| 現場の内容 | 1戸ずつ飛ぶ、既存の状態がばらつく | 同じ間取りが続く、新築、下地が読める |
| 自分の段階 | 技能を広げたい、まだ速度が安定しない | 1日の施工量を数字で言える |
| 収入の希望 | 毎月の額を読みたい | 上限を自分で押し上げたい |
| 時間の使い方 | 時間で拘束されても構わない | 早く終わったら早く上がりたい |
| 取引先の数 | 1社に専属で入っている | 複数あり、空いた日を埋められる |
右の列に3つ以上当てはまるなら、手間請けに寄せて問題が起きにくい状態です。左が多いなら、いま無理に切り替える理由はありません。
段階を踏むなら、常用で入っているあいだに自分の1日の施工量を記録しておくのが一番確実です。3か月分の記録があれば、手間請けに切り替えたときの月収はほぼ計算できます。記録がないまま切り替えるのは、単価だけ見て受けるのと同じことです。
どちらか一方に決めなくてもいい
実務では、手間請けを主にしながら、空いた日に常用や応援で入る形が現実的です。手間請けの弱点は前工程待ちで収入がゼロになることですから、その日を日当仕事で埋められるなら弱点が消えます。
注意点もあります。常用や応援で入る日を作るなら、手間請けの工程を先に確定させておくことです。両方の予定が重なったときに手間請け側を飛ばすと、次の割り当てが減ります。空きを埋めるのは、あくまで空いてからの話です。
そのために必要なのは腕ではなく、連絡先の数です。月に2日の空きを埋めるだけで、日当20,000円なら年間48万円。単価交渉で同じ額を取るのは簡単ではありません。応援の入り方は急に人手が足りないとき、応援職人を最短で見つける方法で整理しています。
まとめ
腕が上がったら手間請け、というのが通り相場ですが、手間請けで残っている人の差は腕より段取りです。同じ速さの2人でも、支給材が前日に入っている現場と当日待ちの現場では、月末の数字が変わります。
まずは1週間、自分が1日に何平米貼っているかを数えてみてください。その数字が、常用の日当 ÷ 平米単価を上回っているかどうか。判断はそこからです。未経験から内装職人になるにはも合わせてご覧いただけます。


