未経験から職人になるとき、最初の1年で起きること
結論からお伝えすると、未経験で内装の現場に入った人の1年目は、最初の1か月で体が音を上げ、3か月目に伸びが止まったように感じ、半年を越えたあたりで急に任される範囲が広がるという順で進みます。給料が上がり始めるのはたいてい半年より後です。この順番を先に知っているかどうかで、辞めるかどうかの判断が変わります。
なお、1年でどんな技術が身につくかについては未経験から内装職人になるには|最初の1年で身につくことにまとめてあります。この記事は「何が身につくか」ではなく、入る前に知っておいたほうがいい「何が起きるか」のほうを扱います。給料の推移、任される作業の変化、辞める人が集まる時期です。
1年の流れを、月で区切ると
| 時期 | 任される作業 | そのとき起きること |
|---|---|---|
| 1〜4週目 | 荷揚げ、養生、掃除、道具の準備と片付け | 手より先に体が限界を迎える。腰と膝に来る |
| 2〜3か月目 | パテの一部、古いクロスの剥がし、下地の清掃 | 作業は増えるが「うまくなった気」がしない |
| 4〜6か月目 | クローゼットや廊下など、小さい面を任される | 初めて自分で貼った面が残る。同時に手直しも出る |
| 7〜9か月目 | 1部屋を通しで、時間を計って任される | 速さを求められ始める。ここで差が見え始める |
| 10〜12か月目 | 簡単な現場を一人で行き、材料の拾いも自分で | 段取りの下手さが数字として出る |
職種や会社の規模で前後します。原状回復を主に扱う会社は同じ間取りを繰り返すので進みが早く、新築や店舗が中心だと現場ごとに条件が変わるため、任される範囲の広がりはゆっくりになります。
先に、1年目でつまずいた例から
- 3週目に腰を痛め、休んでいる間に気持ちが切れてそのまま来なくなった
- 日給1万円と聞いて入ったが、雨と現場待ちで稼働が月17日になり、手取りが想定より4万円少なかった
- 「見て覚えろ」を言葉どおりに受け取り、3か月間ほとんど質問しないまま過ごした
- クロスをやりたくて入ったのに、半年間ずっと剥がしと掃除で、話が違うと感じて辞めた
- 自分の道具を先に20万円分そろえ、辞めるときに使い道がなくなった
4つ目と5つ目は、事前に一言確認しておけば防げます。入る前に「最初の半年で任される作業は何ですか」「道具はどこまで会社のものを使えますか」を聞いておくだけで、想定のずれはかなり消えます。
給料はいつから動くのか
未経験で入る場合、日給月給制であれば1日8,000円から12,000円あたりが一つの目安になります。地域と会社で幅があり、月給制で17万円から22万円という提示もあります。ここで見落としやすいのが稼働日数です。日給制は雨と現場の切れ目で日数が落ちるため、月22日と月17日では同じ日給1万円でも手取りが5万円違います。
上がり始めるのは、1部屋を通しで任せられるようになってからです。半年から1年で500円から1,000円ほど日給が動くことが多く、そこから先は速さと手直しの少なさで決まっていきます。1年目の給料は、覚えた技術の量ではなく、任せても手直しが出ない範囲の広さで決まります。
社会保険や有給の扱い、交通費と車の使用、道具代の負担は会社ごとに大きく違います。求人票の日給だけを比べると判断を誤ります。この4点は面接で必ず確認しておいてください。
辞める人が多いのは、いつなのか?
現場の感覚では、時期がはっきり3つに分かれます。
| 時期 | 理由 | 越えるための材料 |
|---|---|---|
| 2〜4週目 | 体がついていかない | この時期の疲れ方は一時的。3週間を越えると変わる |
| 3か月目 | 成長が見えず、雑用ばかりだと感じる | できるようになった作業を書き出す。増えているのが分かる |
| 8か月〜1年 | 速さを求められ、同期や先輩と比べられる | 速さは3年目まで伸び続ける。1年での比較は早すぎる |
国の調査では、建設業に新卒で入った人の3年以内の離職率は3割から4割台で推移しています。決して低い数字ではありません。ただ、辞める人が集まる時期が分かっていれば、「今の自分の状態はこの山だ」と切り分けて考えられます。
1年目に、自分で用意しておくといいこと
生活費は3か月分を持って入るのが安全です。日給制は最初の給料日までに1か月半近く空くことがあり、体調を崩して数日休むと収入がそのまま落ちます。ここに余裕がないと、続けられたはずの人が金銭の理由で辞めることになります。
もうひとつは記録です。日付、現場、やった作業、かかった時間。これを1行でいいので残しておくと、3か月目の停滞感を数字で否定できます。1年経ったときに、単価の話をするときの材料にもなります。
まとめ
1年目に起きることは、体の限界、伸びが見えない停滞、そして半年以降の急な広がりです。給料が動くのはその後です。順番が分かっていれば、辞めたくなった時期が「山のどこか」なのか「本当に向いていないのか」を切り分けられます。入る前に確認するのは、最初の半年で任される作業、道具の負担、社会保険、そして稼働日数の実績。この4つで十分です。


