大工の単価表はなぜ会社ごとに違うのか

結論からお伝えすると、大工の単価表が会社ごとに違うのは、金額の考え方が違うからではありません。①1項目にどこまでの作業が入っているか、②材料・運搬・雑作業を誰が持つか、③支払いサイトと現場条件——この3つの線引きが会社ごとに違うからです。したがって、2社の単価表を並べて金額の高いほうを選ぶという比べ方は、ほとんど意味を持ちません。

単価表は、その会社がこれまでどんな現場をやってきたかの記録でもあります。手直しが多かった作業には手厚く、揉めた項目には但し書きが付いています。読み方を知っていると、金額以上の情報が取れます。

先に、単価表の数字だけで移った失敗

付き合いのある会社より1割高い単価表を見せられて、そちらに軸足を移した。ところが年間で数えると手元は減っていた。よくある話で、中身はこうです。

  • 単価は高いが、下地の調整と養生が「含む」扱いで、1日で終わる想定の部屋に1.5日かかった
  • 残材と梱包材の処分が請け側の負担で、1現場あたり3,000円から8,000円の実費が消えていた
  • 支払いが月末締めの翌々月10日で、材料の立て替えが2か月分ふくらんだ
  • 現場が広域に散り、移動が片道1時間を超える日が週に2日できた
  • 駐車場を各自手配で、1日1,500円から2,500円が自腹になった

単価表の数字は、金額の一部でしかありません。残りは「含む」「別途」「各自」という言葉のほうに書かれています。

同じ項目名でも、中身が違う

たとえば「間仕切り新設 1か所」という同じ項目でも、範囲は会社ごとに変わります。仮に2社を並べると、こうした差になります。

比べる点単価が高い会社単価が低い会社
下地の調整含む別途で計上できる
石膏ボード張り含む別項目で加算
材料の運搬・荷揚げ請け側元請け手配
残材処分請け側元請け負担
手直しの再訪無償原因により人工計上
支払い翌々月10日翌月末

左の会社のほうが表面の金額は高いのに、実働と立て替えを入れると逆転することがあります。単価表の金額が高い会社より、単価表に「含まれない作業」をはっきり書いてある会社のほうが、1年後に手元に残る金額は多くなります。書いてあれば請求できるからです。

なぜ会社ごとに違ってしまうのか

違いが生まれる理由単価表に出る形
受注している物件の種類(新築・改修・原状回復)細かい補修項目の有無
元請けから受けている金額の水準全項目の一律の高さ・低さ
過去に揉めた作業「含む」「別途」の但し書き
自社で職人を抱えているか人工単価と数量単価の混在
倉庫や運搬体制があるか荷揚げ・運搬の負担先

改修と原状回復が主体の会社は、補修項目が細かく分かれています。1日で3件を回る仕事が多いため、小さな作業にも金額が付いていないと精算が成り立たないからです。新築が主体の会社は逆で、項目が大きく「1か所いくら」でまとめる傾向があります。工程が読めるので、細かく分ける必要がないという理屈です。どちらが良いという話ではなく、自分の得意な作業がどちらの表で拾われるかという相性の問題です。

もう一つ見ておきたいのが、人工単価と数量単価が混在しているかどうかです。単価表の大半が数量単価で、補修や手直しだけ人工で計上できる形になっていれば、想定外の作業が出たときに損を抱え込みません。逆に全項目が数量単価で統一されている表は、数字は分かりやすいのですが、下地が荒れていた現場の負担が全部こちら側に来ます。人工単価が1行でも入っているかどうかは、確認する価値があります。

単価表を比べるとき、何を並べればいいのか?

並べるのは金額ではなく、1日あたりに換算した手取りです。手順は3つで足ります。

  • 直近3か月で実際にやった作業を5つ選び、それぞれの単価表に当てはめて金額を出す
  • その作業に何日かかったかを入れて、1日あたりの金額に直す
  • そこから駐車場・処分費・移動時間・立て替えの負担を引く

この計算をすると、人工に直したときの差は数百円から2,000円程度に収まることが多く、単価表の見た目の1割差はほぼ消えます。残るのは支払いサイトと現場の集まり方です。判断材料としては、そちらのほうが重い。

なお、単価表を見せてもらう段階で「この項目に下地調整は入りますか」と一つ聞いておくと、相手の姿勢が分かります。即答できる会社は現場を把握しています。仕事を探す段階の考え方は急に人手が足りないとき、応援職人を最短で見つける方法にも通じます。

まとめ

単価表の違いは、範囲・負担・支払いの違いです。金額の高低は、その3つを揃えてからでないと比べられません。5項目を1日あたりに直してみる。それだけで、どちらの表が自分の働き方に合うかは見えてきます。

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