大工に将来性はあるのか|人手不足の実際

結論からお伝えすると、大工の仕事そのものは残ります。ただし「人手不足だから将来は安泰」という話ではありません。人手が足りない状況は、単価が上がる理由にも、無理な工程を押しつけられる理由にも、どちらにもなります。どちらに転ぶかは、受ける側がどう構えているかで決まります。

「人手不足=チャンス」と書いてある記事は多いのですが、現場に出ていれば、足りないから声がかかるだけでは単価が動かないことはご存じのとおりです。両面を並べます。

先に、「人手不足だから」で読み違えた例

人手不足を追い風だと考えて動いた結果、こうなったという話は少なくありません。

  • 声がかかる数は増えたが、単価は3年間同じだった。増えたのは仕事の量ではなく問い合わせの数だった
  • 「人がいないので何とか」と頼まれた現場が、他の業者が断った工程ばかりだった。工期が1週間しかない解体後の造作で、しわ寄せを全部受けた
  • 足りないのは自分の職種ではなく、その前後の職種だった。下地が上がってこないため、月に3日待ちが発生した
  • 元請けが人を確保できず、1人でやる前提の工程表が回ってきた。断ると次から声がかからなくなると考えて受けてしまった

人手不足は事実でも、その恩恵が自動で分配されるわけではありません。ここを分けて考える必要があります。

人手不足は、どちら向きにも働く

同じ「人が足りない」から起きること受ける側にとって有利受ける側にとって不利
声がかかる回数が増える選べる。断っても次がある断りにくい関係だと、条件の悪い順に回ってくる
工期が締まる短期で終われば移動が減る1人分の工程を1人で追う。残業と休日出勤が増える
元請けが人を確保できない単価の交渉材料になる前後の職種が入らず、待ち日が発生する
若手が入ってこない技術が希少になる荷揚げを手伝う人がいない。体の負担が増える

左右のどちらに寄るかを決めているのは、断れる状態かどうかという一点です。取引先が1社だけなら、人手不足は不利にしか働きません。売上の8割が1社から来ている状態で条件の話を持ち出すのは現実的に難しく、結果として工期の無理を受ける側になります。逆に3社に分散していて、どこも2〜4割ずつという状態なら、1件断っても翌週が埋まります。人手不足が有利に働くのはこちら側です。

人手不足は、誰にでも追い風になるわけではありません。断れる人にだけ追い風になります。取引先の数という、自分で動かせる部分が条件になっているということです。

仕事の中身は、確かに変わってきている

将来性を考えるなら、量ではなく中身の変化を見るほうが正確です。

減っている・移っている残る・増えている
継手や仕口を現場で刻む工程(工場のプレカットへ移った)納まりの判断。図面どおりにいかない箇所の処理
新築の棟数そのもの既存住宅の改修・断熱改修・耐震補強に伴う造作
手間のかかる和室・造作家具(新築での採用が減った)賃貸の原状回復に伴う部分補修
1棟にかける日数(工期短縮が進んだ)1人で複数工種を見られる人への依頼

刻みが工場に移ったからといって、大工の仕事が半分になったわけではありません。移ったのは「決まった形を作る工程」で、残ったのは「決まっていない部分を決める工程」です。この差は大きく、後者は図面と現物が合わないところを毎回判断する仕事なので、当面は機械や外注に置き換わりにくい領域です。

将来性があるのは、どんな構え方をしている人か?

腕のいい人が必ず残るわけではない、というのが実際のところです。残っている人には、腕とは別の共通点があります。

  • 取引先を3社以上持っている。1社に依存していないので、条件の悪い依頼を断れる
  • 新築だけ、改修だけに寄せていない。片方が止まったときにもう片方で埋められる
  • 閑散期になる月を先に把握し、2〜3か月前から埋めている
  • 写真と記録を残している。過去の施工を見せられると、初めての相手とも単価の話ができる

単価の水準は職種・地域・数量・時期で変わるため、他の人の金額をそのまま持ち込んでも交渉にはなりません。使えるのは自分の施工量と実績のほうです。急に人が必要になったときの動き方は急に人手が足りないとき、応援職人を最短で見つける方法で整理しています。頼む側の事情を知っておくと、頼まれる側としての交渉もしやすくなります。

まとめ

大工の仕事は残りますが、中身は変わり続けます。人手不足は追い風にも向かい風にもなり、断れる状態を作れているかどうかで向きが決まります。将来性を心配するより先に、取引先の数と閑散期の埋まり方を確認するほうが具体的です。

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