大工はきついのか|きつい部分と、続いている人の違い

結論からお伝えすると、大工の仕事はきついです。そこをごまかす意味はありません。ただ、きつさの中身は①体への負担、②単価が上がりにくい構造、③天候と繁閑の波の3つに分けられます。この3つは対策の方向がまったく違うので、まとめて「きつい」で片づけている間は手が打てません。

10年、20年と続けている大工が根性で耐えているわけではないことは、現場に出ている方ならご存じのとおりです。何を選んで、何を断っているのか。そこを分けて見ていきます。

先に、辞めた人のつまずき方から

3年から5年でやめていく人の理由は、意外なほど似ています。

  • 腰を痛めて2か月休み、復帰後も同じ動きを続けて再発した
  • 手間請けに切り替えたが、材料待ちや他業者との取り合いで1日つぶれる日が月に3〜4日あり、実質の日当が下がった
  • 片道1時間半の現場を続けて受け、拘束時間が1日12時間を超えた
  • 梅雨と真夏に外部の仕事が止まり、7月・8月の売上が通常月の6割になった

並べてみると、腕の問題はひとつも出てきません。体を壊す原因も、稼ぎが伸びない原因も、技術ではなく「受ける仕事の選び方」に寄っています。ここが分かれ道です。

きつい部分を、具体的に分解する

感覚で語ると対策が立たないので、数量で置き換えてみます。

きつさの種類現場での目安効いてくるところ
荷揚げ石膏ボード1枚10kg前後を1日30〜60枚腰・膝・肩
移動片道40分〜1時間半、往復で1〜3時間拘束時間・睡眠
待ち時間材料待ち・他業者待ちで月2〜4日実質日当
気温小屋裏や天井裏は外気より5〜10度高くなることがある体調・集中力
閑散期年に1〜2か月、売上が通常の6〜8割資金繰り

こう並べると、体力そのものよりも「手を動かしていない時間」が効いていることが見えてきます。移動2時間と待ち1日は、腕を上げても短くなりません。

もうひとつ、数字にしにくいきつさがあります。天候です。外部の工事は雨が降れば止まりますが、止まった日の分は誰も払ってくれません。月に4日流れれば、その月は実質20日稼働ではなく16日稼働です。日当2万5千円で計算すれば10万円の差になります。これを「仕方ない」で処理し続けると、年間では相当な額になります。

単価の伸びにくさは、腕のせいなのか?

ここが一番きついところかもしれません。手間請けの単価は職種や地域、数量、元請けとの関係で変わり、同じ工事でも幅が出ます。造作の手間請けで1日あたり2万円台から3万円台という水準がよく聞かれますが、これは地域と時期、そして工事の内容によって上下します。真に受けて自分の単価と比べても意味はありません。

問題は、腕が上がっても単価が自動では上がらないことです。早く終わらせれば元請けは助かりますが、日当が同じなら手取りは変わりません。むしろ1日で終えた分だけ次の現場が必要になります。腕を上げるほど単価が上がると思っている限り、単価は上がりません。上がるのは、他の人に頼めない工事を持っているときと、こちらの都合を通しても外されない関係があるときです。

続いている人がやっていること

精神論を抜くと、やっていることは3つに絞られます。

やっていること中身
移動を先に決める片道1時間を超える現場は連続で受けない。エリアをまとめて、週の中で移動距離の総量を管理する
荷揚げを分ける荷揚げだけ別で人を頼む、または搬入日を分ける。1日にボード60枚を1人で上げる前提で見積もらない
閑散期を先に埋める7〜8月、1〜2月に入る仕事を、その3か月前から探しておく。内装や補修など天候に左右されない工事を組み合わせる

体の使い方も同じで、無理な姿勢を減らす道具を先に買っている人が多いです。膝サポーター、昇降できる作業台、軽量のインパクト。1万円から3万円の出費で、10年後の体が変わる可能性があります。すでに腰や膝に痛みが出ている場合は、我慢して続ける判断は避けてください。整形外科などの医療機関で状態を確認し、勤め先に産業医がいれば相談しておくほうが確実です。

人手が足りない日の埋め方は急に人手が足りないとき、応援職人を最短で見つける方法にまとめてあります。荷揚げだけ頼むという発想も、選択肢のひとつです。

まとめ

大工がきついのは本当です。ただ、きつさの大半は移動と待ちと繁閑の波であり、受ける仕事の選び方で削れる部分が残っています。体を痛めてから選び方を変えるのでは間に合いません。今の1週間で、移動に何時間使っているかを数えるところからで十分です。

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