一人親方は熱中症対策の義務化の対象なのか|2026年夏、元請けの現場で求められること

気象庁が2026年8月3日に発表した資料によると、2026年7月中旬から下旬の西日本の平均気温は、統計開始の1946年以降でもっとも高くなりました。暑さの中で作業している方は、まず体調を最優先にしてください。

結論からお伝えすると、2025年6月1日に義務になった熱中症対策は、「事業者が、自分の雇っている人に対して」行うものです。一人で現場に入る一人親方は、この条文で義務を課される側ではありません。ただし「自分には関係ない」では済みません。2026年4月1日から、元請けが現場で講じる措置の対象が、雇っている労働者だけでなく一人親方を含む「作業従事者」に広がったからです。

※本記事は2026年8月9日時点の内容です。制度の細部は今後の政省令などで変わる可能性があります。

2025年6月に義務になったのは何か

労働安全衛生規則(安衛則)第612条の2です。対象は、WBGT値が28度以上、または気温が31度以上の場所で、継続して1時間以上、または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業。事業者に求められるのは次の2つです。

  • 報告体制の整備と周知:本人に自覚症状があるとき、周りが「様子がおかしい」と気づいたときに、誰にどう報告するかを決めて知らせておく
  • 悪化を防ぐ手順の作成と周知:作業からの離脱、体を冷やすこと、必要に応じて医師の診察を受けさせることなど、措置の内容と手順、緊急連絡先を定めておく

「水分を配る」ではなく、倒れかけたときに誰にどう伝わるかを先に決めておけという中身です。2人以上で互いの体調を確認する「バディ制」も報告体制の例に挙げられています。

一人親方と熱中症対策をめぐる4つの事実の図。義務の名宛人は事業者であること、2026年4月から元請けの措置の対象が拡大したこと、ガイドラインは一人でも同様の対応が望ましいとしていること、2027年4月の義務化は熱中症対策そのものではないことを示している

一人親方は対象なのか

安衛則の義務は事業者が労働者に対して負うものなので、一人で現場に入る一人親方はこの条文の直接の名宛人ではありません。ただし2026年4月1日施行の改正(労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律/令和7年法律第33号)で、元方事業者が混在作業場所で講じる指導や連絡調整などの措置の対象が、雇用されている労働者から「個人事業者等を含む作業従事者」に拡大されました。元請けの安全体制の中に、自分も入っているということです。2026年3月18日公表の国のガイドラインも、注文者や、一人で働く個人事業者等に対し、事業者と同様の対応を行うことが望ましいとしています。

なお、個人事業者等自身への義務付けは2027年4月1日施行ですが、その内容は安全装置などを備えていない機械の使用禁止・特定の機械の定期自主検査・危険有害業務の安全衛生教育の受講で、熱中症対策そのものではありません。元請けから求められる書類は 一人親方が元請けから求められる書類一式 にまとめています。

気温31度を超えなければ平気なのか?

いいえ。612条の2の「WBGT28度・気温31度」は、体制を整えなければならない作業かどうかの線であって、「ここまでは安全」の線ではありません。実際の危険度は、作業の重さと、体が暑さに慣れているか(暑熱順化)で変わります。ガイドラインのWBGT基準値です。

  • 中程度の作業(しっくい塗り、くぎ打ち、中くらいの重さの材料を断続的に持つ):暑さに慣れている人で28、慣れていない人で26
  • きつい作業(重量物の運搬、ハンマー作業、のこぎり作業、掘る):慣れている人で26、慣れていない人で23

ここから読み取れることがあります。連休明けや、仕事が空いた週の翌週に出る日は、自分が「慣れていない側」にいるということです。同じ現場・同じ気温でも基準は2〜3度低くなります。注意がいるのは最高気温が出た日とは限らず、暑い時期に久しぶりに現場へ出た日です。

WBGTは黒球のある指数計(JIS Z 8504 または JIS B 7922 適合)で測るのが基本です。地域の参考値は環境省の熱中症予防情報サイトに出ていますが、直射日光下や、冷房がなく風通しの悪い屋内では参考値が実測より低めに出るため実測が必要とされています。

WBGT基準値を超えたときの休憩の目安の図。1℃超過で1時間あたり15分以上、2℃で30分以上、3℃で45分以上、それ以上は作業中止が望ましいことを示している

休憩はどれくらい取るのが目安か

ガイドラインの目安です(体を冷やす服を着ておらず、暑さに慣れた人の場合)。

  • WBGT基準値から1℃程度の超過:1時間あたり15分以上の休憩
  • 2℃程度の超過30分以上
  • 3℃程度の超過45分以上
  • それ以上の超過:作業中止が望ましい

慣れていない人は、これより長い休憩が望ましいとされています。休憩場所は「足を伸ばして横になれる広さ」、体調を崩した人を休ませるときは一人きりにしないこととも書かれています。単独で入る現場の弱点はここです。

一人親方が現場で決めておくこと

  1. 緊急連絡先を言える状態にしておく。元請けの担当者の番号と現場の住所。倒れてから調べるものではありません
  2. 入る前に元請けに3つ聞く。報告先は誰か/休憩場所はどこか/WBGTを測っているか
  3. 単独作業の時間を短くする。基準値を大幅に超える中でやむを得ず作業するときは単独作業を控える、とされています
  4. 経口補水液・塩分・体を冷やすものを車に積んでおく

工程を詰められそうになったとき、「暑いので」ではなく「WBGTが基準値を超えているので1時間あたり◯分休みます」と言えると話が通りやすくなります。根拠のある言い方は、断るための道具になります。応援で入るときの拘束時間と単価は 応援に入るときの単価の決め方、長く続けるための工夫は 体を壊さずに続けるための工夫、休業への備えは 一人親方の労災保険(特別加入) を参考にしてください。

なお、自分の立場が「労働者」と「個人事業者等」のどちらに当たるかは、契約の形(雇用か請負か)や働き方で変わります。一般的な目安は以上のとおりですが、具体的な判断は所轄の労働基準監督署または都道府県労働局の安全衛生担当へご確認ください。

段取りは現場ごとに違います。職人の相談・雑談の掲示板で、他の人のやり方を聞いてみてください。

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