職人をやめるか続けるか、判断の材料

結論からお伝えすると、この記事では「やめるべき」「続けるべき」の答えは出しません。決めるのはご本人です。ここで渡すのは判断の材料で、①数字にした現状、②やめたい原因の切り分け、③続ける場合に変えられること、④やめる場合に持ち出せるものの4つです。

この4つを埋めてもまだ迷うなら、それは情報が足りないのではなく、どちらでも成り立つということです。その場合はどちらを選んでも大きくは外れません。

先に、勢いで決めて後悔した例を両方から

後悔はどちらの側にも起きます。片方だけを並べるのは公平ではないので、両方書きます。

  • やめて後悔した例。原因は元請けの担当者との関係だけだったが、職種ごとやめてしまった。転職後の手取りが月4万円下がり、拘束時間はほぼ同じだった
  • やめて後悔した例。道具を全部売却した。半年後に戻る話が来たが、揃え直すのに30万円以上かかると分かって断った
  • 続けて後悔した例。腰の痛みを2年我慢し、動けなくなってから受診した。復帰までに4か月かかった
  • 続けて後悔した例。取引先1社に依存したまま10年続け、単価が動かなかった。他社の水準を知ったのは辞める話が出たあとだった

4つとも共通しているのは、決める前に情報を集めていないことです。決断の質ではなく、材料の量の問題です。だからここでは、答えではなく材料の集め方だけを並べます。

材料1|現状を数字にする

感覚のままだと、いい日と悪い日のどちらかに引っぱられます。次の項目を過去12か月で埋めてみてください。1時間もかかりません。

項目書き出すもの見えてくること
年間の稼働日数実際に手を動かした日数雨・待ち・閑散期で何日落ちているか
1日あたりの手取り年間の手取り÷稼働日数日当の額面との差。経費と移動費の重さ
拘束時間家を出てから帰るまでの平均移動を含めた1時間あたりの実額
売上が落ちる月通常月の何割か資金繰りで詰まる時期
取引先の数と割合1社に何割寄っているか条件を断れる状態かどうか
休んだ日数体調で休んだ日体の負担が限界に近いか

たとえば拘束時間が1日12時間で稼働230日、手取りが日あたり1万8千円なら、1時間あたり1,500円です。この数字が出てから比べると、他の仕事と並べたときの判断がはっきりします。

材料2|「やめたい」の原因を分ける

原因が職種そのものにあるのか、今の環境にあるのかで、打てる手がまったく変わります。

やめたい理由環境を変えれば動く可能性がある職種そのものに関わる
単価が上がらない取引先を増やす、工種を足す職種全体の水準が低い場合は残る
体がつらい荷揚げを分ける、道具を変える、現場を選ぶすでに痛みが出ているなら医療の判断が先
人が合わない取引先を変えれば解消することが多い
先が見えない分野を改修側に寄せる
作業自体が好きではないこれは環境では動かない
家族との時間が取れない移動時間とエリアを絞る繁忙期の波は残る

左の列に丸が付くものばかりなら、やめる前に試せることが残っています。右の列、とくに「作業自体が好きではない」に当たるなら、続けても解決しません。そこは正直に見たほうがいいところです。

やめる場合、持ち出せるものは何か?

やめる選択を選んだ場合でも、これまでの年数は消えません。持ち出せるものを整理しておくと、次の選択肢が広がります。

  • 施工写真と現場の記録。同業に戻るときも、施工管理や建材メーカーへ移るときも材料になる
  • 技能士などの資格。取りかけているなら、やめる前に取り切っておく選択もある
  • 道具。すぐに売らない。戻る可能性が残っている間は保管しておく
  • 人のつながり。円満に離れておくと、数年後に声がかかる

一度離れても戻れるのが、この仕事の数少ない特徴です。人が足りない状態が続いているため、経験者が戻る余地は残っています。だからこそ「一生の決断」として重く考えすぎる必要はありません。半年休んでから決めてもかまいません。今の環境だけを変えて様子を見る方法もあります。仕事の探し方の実務は未経験から内装職人になるにはで職種を変える場合の入り口を、急に人手が足りないとき、応援職人を最短で見つける方法で頼む側の事情を整理しています。

まとめ

やめるか続けるかは、他人が決められることではありません。決められるのは、判断に使う材料を揃えるところまでです。12か月の稼働日数と手取り、拘束時間、取引先の割合。この4つを書き出したうえで出した答えなら、どちらでも間違いにはなりにくいはずです。

\ 最新情報をチェック /