若手職人を育てるとき、最初に教えること

結論からお伝えすると、若手に最初に教えるのは技術ではありません。順番は①危険から離れる判断、②報告の仕方、③段取りと片付けで、道具の使い方や仕上げの精度はその後です。この順番を入れ替えると、覚えるのが遅くなるうえに辞めやすくなります。

技術を教えたい気持ちが先に立つのは自然なことです。ただ、現場に慣れていない人にとって最初の壁は技術ではなく、何をどの順でやればいいのか分からない状態が続くことにあります。

先に、育たなかったときに起きていること

入って3か月でいなくなる、1年経っても任せられない。どちらのパターンも、原因は本人の資質ではないことが多いです。

  • 「見て覚えろ」で3か月放置した。本人は毎日何をしていいか分からず、聞くタイミングも掴めないまま辞めた
  • 指示が人によって違った。前日と逆のことを言われ、どちらが正しいか判断できなくなった
  • 失敗を叱ったが、正しい手順を見せていなかった。同じ失敗が3回続き、こちらが手直しに半日使った
  • 報告の仕方を教えていなかったため、材料が足りないことを黙っていた。判明したのは翌朝で、その日の工程が止まった

「見て覚えろ」は教える手間を省く方法ではありません。手直しと段取りの遅れという形で、教える側が後から倍払うことになります。最初の3か月に1日15分を使うほうが、結果として自分の時間が残ります。

最初の3か月で教える順番

時期教えることできたと判断する基準
初日立ち入ってはいけない場所、開口部・脚立・電源の扱い、体調が悪いときは必ず言うこと危ないと思ったら手を止めて呼べる
1週目報告の3点(終わった・止まった・足りない)。誰にどのタイミングで言うか材料が足りないことを、その場で言える
1か月目養生、片付け、道具の置き場所、翌日の段取り朝一番に何をするかを自分で言える
2〜3か月目道具の使い方、下地の見方、簡単な工程を通しで任せる1室の養生と片付けを1人で回せる

報告を「①終わった②止まった③足りない」の3語に絞るのは、言い方を考えなくて済むようにするためです。慣れていない人は、報告の内容ではなく報告してよいかどうかで迷います。型を渡すと止まらなくなります。

初日に危険の話から入るのは、事故が起きたときに取り返しがつかないからです。開口部、脚立の使い方、電源。この3つだけでも初日に伝えておくと、こちらが目を離せる範囲が広がります。教えていない状態で任せて何かあれば、責任はこちら側に残ります。

技術はいつから教えればいいのか?

片付けと養生が回るようになってからです。理由は2つあります。ひとつは、養生と片付けが雑な状態で仕上げを触らせると、直す手間が増えること。もうひとつは、養生を任せる過程で本人の手の速さと丁寧さが見えるため、どこから教えるべきかが分かることです。

教え方としては、見せる・一緒にやる・やらせて見る、の3段階に分けると詰まりにくくなります。1つの作業に対して3回。1回目で見せ、2回目は横で同じ動きをさせ、3回目は任せて後から確認します。同じ作業で3回目まで行かずに次へ進むと、たいてい戻ります。

辞めさせないために効くこと

やることなぜ効くのか
その日の終わりに1分だけ振り返るできたことが本人に見えない状態が続くと、伸びていないと感じて辞める
指示を出す人を1人に決める複数から違う指示が来ると、判断できず動けなくなる
道具を揃える計画を一緒に立てる最初に必要な道具は職種によるが2〜3万円程度から。全部を自腹で急に揃えさせない
3か月と1年で一度話す離職が起きやすい時期。続ける気があるかを先に聞いておく
失敗の報告を叱らない報告が止まると、被害が翌日以降に膨らむ

叱らないというのは、甘くするという意味ではありません。手順を教えていない失敗は本人の責任ではないので、そこを分けるという話です。手順を見せたうえで同じ失敗が続くなら、そこは指摘する場面です。

入ってくる側が何を不安に思っているかは、未経験から内装職人になるにはにまとめてあります。教える側が一度読んでおくと、説明の順番を組みやすくなります。

まとめ

教える順番は、危険の判断が最初、次に報告、その次に段取りです。技術は4番目で間に合います。1日15分を3か月続ければ、手直しに使っている時間のほうが先に減ります。指示を出す人を1人に決めるところだけでも、明日から変えられます。まずはそこだけでかまいません。若手が伸びない現場は、たいてい指示の出し方から崩れています。

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