体を壊さずに続けるための工夫
結論からお伝えすると、体を壊す原因は①暑さ、②同じ姿勢の繰り返し、③睡眠と移動時間の3つに集約されます。どれも根性では処理できません。逆に言えば、段取りと道具で減らせる部分が多く残っているということです。
体調や痛みの判断は医療の領域です。ここでは現場の段取りとしてできることに絞ります。痛みや体調不良がある場合は、我慢して続ける前に医療機関で確認してください。勤め先に産業医がいる場合は、作業内容を含めて相談できます。
先に、倒れた現場で起きていたこと
熱中症で搬送される現場に共通しているのは、暑さそのものよりも段取りの問題です。
- 工期が押していたため、昼をはさんで4時間続けて作業した。休憩は10分だけだった
- エアコンが未設置の新築で、窓を開けても風が抜けず、室内が外気より高くなっていた
- 前夜の睡眠が4時間。片道1時間半の移動で、現場に着いた時点で疲れていた
- 本人が「大丈夫」と言ったため周囲が任せた。倒れたのは午後3時前だった
- ひとり作業だったため、気づかれるまで20分以上かかった
いちばん危ないのは、水を飲んでいないことよりひとりで作業していることです。倒れてから発見までの時間が、その後を大きく左右します。ひとり現場になる日は、休憩のたびに誰かへ連絡を入れる、決めた時間に返信がなければ確認してもらう、という取り決めだけでも状況が変わります。手間は1日3分もかかりません。
暑さは「気温」ではなく指数で見る
気温だけを見ていると判断を外します。湿度と輻射熱を含めた暑さ指数(WBGT)が使われており、環境省が地域ごとの予測値を公開しています。数百円から数千円の測定器も出回っているので、現場に1つ置いておく方法もあります。
| 暑さ指数の目安 | 区分 | 現場でのふるまい |
|---|---|---|
| 25〜28 | 警戒 | 1時間ごとに休憩を入れる。水分を意識的に取る |
| 28〜31 | 厳重警戒 | 激しい作業は避ける。休憩を短い間隔で複数回に分ける |
| 31以上 | 危険 | 作業の中止・時間帯の変更を検討する |
実務としては、閉め切った新築の室内や小屋裏・天井裏は外気より5〜10度高くなることがあるため、外の数値をそのまま当てにできません。作業する場所で測るのが基本です。なお、事業者に熱中症への備えを求める規則の改正も行われています。作業の中止基準や連絡体制について、詳しい要件は労働基準監督署に確認してください。
体の負担を減らす、具体的な手
| 痛みが出やすい場所 | 原因になりやすい動き | 段取りで減らす方法 |
|---|---|---|
| 腰 | 10kg前後のボードを膝を伸ばしたまま持ち上げる。1日30〜60枚 | 搬入日を分ける。荷揚げだけ人を頼む。パネルリフターや台車を使う |
| 膝 | 床仕上げで1日3〜4時間の膝立ち | 厚手の膝当て。低い作業台に座って加工する |
| 肩・首 | 天井作業で腕を上げ続ける | 昇降式の足場台で顔の高さを変える。天井は午前に回す |
| 手・肘 | インパクトの振動を1日中受ける | 軽量機種に替える。防振手袋。締める本数を工程で分散する |
| 全身 | 片道1時間半の移動を毎日 | エリアをまとめて受ける。移動の総量を週単位で管理する |
道具にかかる費用は、膝当てや防振手袋なら数千円、昇降式の足場台や台車で1万〜3万円程度です。1日の日当と比べれば1日分にも届きません。体を守る道具は「余裕ができたら買うもの」ではなく、最初に買っておくと10年後の稼ぎが変わるものです。2か月休めば、その間の売上はゼロになります。
対策は何歳から始めればいいのか?
痛みが出てからでは遅い、というのが現場で繰り返し言われることです。20代のうちは無理が通るので、通ってしまうことが問題になります。年齢で区切るなら、次の3つのどれかに当たった時点が始めどきです。
- 朝、起きたときに腰や膝が痛む日が週に2日以上ある
- 去年より1日の施工量が落ちているのに、疲れは増えている
- 夏の午後に、集中が切れる時間が早くなってきた
いずれも自覚しやすいサインです。当てはまるなら段取りを変える前に、まず医療機関で状態を確認してください。年に1回は健康診断を受けておくと、比べる基準ができます。前年と比べられる数値があると、どこから落ちてきたのかが分かります。
荷揚げの負担を分けるだけでも、腰にかかる回数は半分近くまで落ちます。荷揚げや人手の手配で軽くできる部分は急に人手が足りないとき、応援職人を最短で見つける方法も参考になります。
まとめ
暑さは指数で見て、作業する場所で測る。ひとり作業を減らす。荷揚げと天井作業を段取りで分散する。道具は先に買う。この4つは今日から着手できます。痛みや体調の判断は自分でせず、医療機関と、産業医がいれば産業医に相談してください。


